1966年、敬老の日が国民の祝日になったのを記念して日本交通公社が80歳以上の夫婦などを「お伊勢参り」に招待。こんな余裕のある老後は望めそうにない(時事通信フォト)

1966年、敬老の日が国民の祝日になったのを記念して日本交通公社が80歳以上の夫婦などを「お伊勢参り」に招待。こんな余裕のある老後は望めそうにない(時事通信フォト)

 普通に働いてきて、いろいろあったのだろうが日本国民として昭和、平成、令和と生きてきた石倉さん、そんな国の回答が僅かな年金であり、菅義偉新内閣総理大臣の第一声となった「自助」とは。内閣支持率は毎日で64%、日経に至っては74%。これだけの現実を前にしてもみんな自分が堕ちるなんて思ってない。

「総理大臣に自助って言われたら仕方ないですね」

 仕方ない、は石倉さんの口ぐせなのか常についてまわった。確かに新指導者から真っ先に自分で何とかしろと言われてしまっては絶望しかない。対する民主党もどの口が言うかで、旧民主党時代には消費税の増税だけ実行して社会保障のマニフェストはなし崩しになった。そしていま、安倍政権から自助の菅義偉へ。あの懐かしい三党合意はなるほど社会保障削減のための共謀だったのかと穿ってしまう。

「私と同じ年代ですから、なんとかしてほしいですよ」

 そういえば自民党新4役の平均年齢は71.5歳、石倉さんの年代だ。ある意味「一生働け」のメッセージか。もっとも「自助」「一生働け」ということで助けてはくれないだろう。

 私は石倉さんと話している間中、ずっと息苦しかった。それはマスクのせいではなく、自分の身にはさらなる地獄が降り掛かってくることを想像してのことだ。いまの50歳から下の連中は私も含めて石倉さんにも満たない年金しかもらえないだろう。それどころか70歳、75歳と支給年齢は引き上げられるに違いない。その場でちょっとスマホで検索するだけで「警備員(23区内)/直行直帰/70・80代活躍/定年無し」という求人が見つかる。何のホラーだ。80歳くらいまで働いて、あとは年齢制限一切なし、雇用関係もないウーバーイーツで100歳だって働ける日本から働かざるを得ない日本へ。なんて恐ろしい。先の厚労省の平均モデル世帯に満たない者ばかりであろう、私たち団塊ジュニアやその下の世代には、そんな自助の未来が現実味を帯びている。それも、一生マスク生活になるかも知れない新世界のディストピアで。

●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。近刊『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)寄草。近著『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。

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