マジック点灯最速記録を持つ1965年の南海は2位に12ゲーム差をつけてパを制したが、日本シリーズで巨人に1勝4敗と敗れ、日本一を逃した。当時の南海は「パでは独走するが、日本シリーズはからきし」が定番で、巨人V9時代には3度も日本一を献上している。エースとして辛酸をなめたのが江本氏だ。

「早い時期にリーグ優勝を決めると、チームが目標を失ってしまい、テンションが下がる傾向がある。当時は、リーグ優勝したら派手に騒いだこともあります。日本シリーズまでに実戦感覚が鈍り、シーズン中のレベルに戻すのは容易ではなかった」

 同様の苦い経験は巨人にもある。

 1990年、藤田元司監督率いる巨人は2位に22ゲーム差をつける歴史的圧勝でリーグ3連覇を果たした。優勝決定は9月8日で、日本シリーズ開幕まで42日もの間隔があった。いざ戦いの幕が上がると、シーズンの勢いは見る影もなく、西武に4タテを喫したのだった。投手コーチだった中村稔氏はこう振り返る。

「優勝後、キャンプをやったんですが、気合の入らないこと。パの試合を観戦したりしましたが、どのチームが来るか決まっていないと、集中できない。優勝しているのだから、選手に飲みに行くなとも言えなかったし。調整は難しかったですね」

※週刊ポスト2020年10月9日号

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