尿漏れの予防も
「ため息スクワット」の第一の利点は、下半身の筋肉、とくに太股(大腿四頭筋)の筋力強化にある。
「太股に筋肉がついていれば楽に立ったり座ったりでき、歩くことも苦になりません。“ちょっとした段差でつまずく”という危険も回避できます。膝を深く曲げ過ぎないので、膝や腰を痛める心配もありません」
下半身の筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、体内の糖質が消化されにくくなる。
「高血糖状態が続くと全身に脂肪がたまりやすくなるとともに血管の老化が進み、糖尿病や心臓病のリスクが増す。スクワットで下半身の筋肉を鍛えれば、これらのリスクを抑えることが可能です」
筋肉と同時に血管のポンプ機能が高まり、血流が改善する効果も期待できるという。この血流改善を強力に後押しするのが、「ため息」だ。
人は呼吸が浅く速くなると、緊張状態で働く交感神経が優位になって血管が収縮し、血流が悪くなる。逆にゆっくり深く呼吸するとリラックス時に働く副交感神経が優位になり、血管の緊張が解けて血流が促される。
「そこで『ため息』というわけです。ため息をつくように呼吸すると、副交感神経が刺激され、血流が良くなり、血液が体の末端部にまで行き渡るのです」
副交感神経の活動は加齢とともに低下するため、高齢になると自律神経のバランスを崩しやすい。だが、「ため息スクワット」を行なえば自律神経のバランスが整い、頭痛、倦怠感、不眠などの悩みにも効果的だという。それだけではない。
「加齢によって衰えてしまう骨盤底筋群と肛門括約筋も鍛えられるので、尿漏れや便失禁の予防も期待できます」
老化を遠ざける究極の健康法。これなら“前向きなため息”がつけそうだ。
※週刊ポスト2020年10月9日号