猛暑から一転、早くも冬を感じさせるほどの肌寒い日が続くようになった。秋から冬にかけて、医療の現場ではあらゆる病気のリスクが高くなる。夏の間も猛威をふるい続けた新型コロナウイルスに加え、インフルエンザの流行、さらに気温が下がるとともに高齢者の脳卒中や心筋梗塞などの死亡者数が跳ね上がる。
季節の移り変わりに不安を覚える人もいるだろう。しかし、厚生労働省「人口動態統計月報」では意外な数値が並び、医療関係者を驚かせている。9月に公開された今年1月から4月までの国内死亡者数を昨年同時期と比べると、今年の方が1万200人以上も少ないことがわかったのだ。
死因の中で最も減少しているのは呼吸器系の疾患で、6708人も減っている。その背景には、新型コロナ感染対策として多くの人々が「手洗い、うがい、マスク」を徹底するようになり、インフルエンザや風邪などにかからなかったことがあるとされる。
注目すべきは、循環器系疾患の死者が昨年に比べて5629人も減少した点だ。ただし、大幅な減少をしているのは65才以上の高齢者であり、65才未満の世代では昨年と大きな変化はない。循環器系疾患の中でも、65才以上では急性心筋梗塞1423人、心不全1407人、脳卒中1691人も減少した。これは決して小さな数ではない。
アメリカ人の死亡原因第3位は「医療過誤」
その理由の1つとして、新型コロナの流行拡大によって「新しい生活様式」が始まり、不要不急の症状でも病院へ通っていた高齢者が外出を控えたことが考えられる。都内でひとり暮らしをする80代の女性は、こう打ち明ける。
「以前は少し具合が悪いとすぐに近所の内科に行っていたし、腰痛があるのでバスに乗って整形外科にも通っていました。でもコロナにかかると高齢者は重症化しやすいというし、病院で感染者が出たというニュースもありましたよね。離れて暮らす娘からも、あまり頻繁に病院へ行かない方がいいと言われ、病院へ行く回数はぐっと減りました。それでも体調に問題はないし、元気に過ごしています」