レーガン氏は国民に愛され尊敬された大統領だった(CNP/時事通信フォト)
「イーグルクロウ(鷹の爪)」と名づけられたこの作戦は無残な失敗に終わる。3機のヘリコプターが砂塵のためにイランに到達できず、もう1機も故障に見舞われた。作戦の中止が決定された後、混乱の中でヘリコプターと輸送機が衝突し、8名の隊員が命を落とした。衝撃を受けたジミー・カーター大統領が国民に秘密作戦の失敗を告げたのは、それから数時間後のことであった。「この任務を開始した責任は大統領としての私にある。この任務を中止した責任も、大統領としての私にある」と苦渋の胸中を語った。
時はまさに大統領選挙のさなかだった。その時、共和党の有力候補だったロナルド・レーガン氏はどう対応したか。選挙キャンペーン先で、「救出作戦が失敗し、国難の事態を迎えた。このような時は、国民は大統領を支持し、大統領の下に集結すべきである」と演説したのである。この態度は国民から称賛され、レーガン氏は選挙で圧勝して大統領に就く。国の舵取りをする大統領に対する敬意とはそういうものであり、大統領を目指す者であれば、これくらいの見識を示してほしいものだ。
改めてトランプ大統領とバイデン前副大統領はどうであろう。どちらも何年もホワイトハウスにいて大統領職のなんたるかはよく知っているはずだし、もちろんレーガン氏の演説も心に刻まれているだろう。ところが驚くことに、一方の候補がコロナウイルスに感染し、生命の危機に晒されているという状況で、互いに非難、攻撃を続けているのである。バイデン支持のCNN、MSNBCとトランプ支持のFOXニュースは、相変わらず互いの弱点を攻撃し合い、口を極めた批判を展開し、泥仕合をやめようとしない。もちろん両陣営のキャンペーンチームが裏で動いているからである。
いい加減にしてほしい。大統領までが侵されたこの恐ろしいウイルスとどう戦うのか、国のトップを目指す者は、今こそコロナ危機に真正面から向き合ったらどうなのか。