新たな時代に即したトップ人事
リアル店舗に加え、ネット事業など新たなビジネスモデルの真価が問われる中、両社ともトップ人事を含めて動きが急だ。
ビックカメラは9月1日、子会社のコジマ会長兼社長でビックカメラ取締役の木村一義氏が社長に昇格。宮嶋宏幸社長は同日付で代表権のない取締役副会長に退いた。15年の長期政権だったが、2020年8月決算で2期連続の最終減益になることが確実となったことから、宮嶋氏自身が退任を申し出たという。
後任社長の木村氏は日興証券(現SMBC日興証券)を経て、2012年にビックカメラに入社。2013年にコジマの会長兼社長に就いた。“家電マン”としては素人同然だが、新しい経営の視点が必要になったということだ。巣ごもり需要で減益幅は減少する見込みだが、それだけ家電量販店の経営は難しくなっている。
一方、ヨドバシカメラも7月1日付で前出の藤沢和則副社長が社長に昇格し、創業者で父親の藤沢昭和社長は代表権のある会長に就いた。社長交代は1960年の創業以来、初めてのことだ。
昭和氏は持ち株会社、ヨドバシホールディングスでは引き続き社長を務め、経営の最前線に立ち続ける。これまでネット事業をリードしてきた和則氏は、ネットと実店舗の融合をさらに進める方針だ。
キーワードは「脱家電」「非家電」
このように、薄利多売の店舗型ビジネスが成長の踊り場に差しかかっている家電量販店。いまや若い消費者は衝動買いなどとは無縁の存在で、家電量販店で実物を見て、「いいね」となれば、ネットで一番安い店を探してそこに注文を出す。いわば“ショールーム的”な存在になりつつある。
JR秋葉原駅前にそびえるヨドバシカメラの大型店「ヨドバシAkiba」(時事通信フォト)
しかも、少子高齢化による人口減で国内市場が縮小に向かう中、家電量販店は「脱家電」「非家電」をキーワードに新しい業態やビジネスにも挑戦しなければ生き残れない時代となった。ネット通販などを活用しながら、いかに細分化された消費者ニーズを拾い上げることができるかが、今後の勝敗を決めるカギとなる。
コロナ禍の給付金効果は一時的なものだ。何度も神風が吹いたりはしない。