大阪・梅田に日本最大級の複合商業施設
ヨドバシカメラは他の量販店と異なり、いち早く不動産事業に進出。都心部の一等地に大型店を出し、単価の高いカメラを値引き販売するビジネスモデルを確立してきた。大阪・梅田と東京・秋葉原に大型店を構えているが、いずれも1店舗あたりの売上高が1000億円前後の巨艦店だ。
ヨドバシは2019年11月、JR大阪駅前の「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」を拡張し、新たな商業施設「リンクスウメダ」をオープンした。マルチメディアとリンクス、2つ合わせた売り場面積は約9万平方メートルと日本最大級の複合商業施設である。
百貨店などの競合店がひしめく梅田エリアに立地。5階のアミューズメント施設「モーリーファンタジー」には、映像を投影した滑り台や自分が描いた魚が泳ぎまわるスクリーンなどを完備。子供向けフィットネスクラブや子供服の店もある。
「リンクスウメダ」が入居する「ヨドバシ梅田タワー」には1日100台が発着できるバスターミナルを整備し、ファミリー層の来店を促す。
オムニチャネルで抜きに出るヨドバシ
藤沢和則社長はヨドバシカメラに入社後、IT(情報技術)や物流部門の責任者として業務の改革を担当。ネット通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」の拡大を進めてきた。
ヨドバシカメラは業界の常識にとらわれず、1998年にいち早くネット通販に参入した。楽天市場のサービス開始は1997年、アマゾンジャパンがサービスを始めたのは2000年である。ヨドバシは、いわば国内ECの黎明期にネット通販を始めたことになる。
当時、家電量販店はどこもネットの進出には消極的だった。従来の店舗型ビジネスは、商品を大量に仕入れて大量に販売する「薄利多売」の成功体験のうえに成り立っていたからだ。売れ筋の商品に的を絞り、それを実際の店舗で売り切ることが要諦。商品を網羅的に揃えるネットとはビジネスモデルがまったく違ったため、どの量販店もネットの商売には本格的に手を出さなかった。ノウハウがなかったから手を出せなかったのである。
ヨドバシがEC事業に新規参入した頃はカタログ通販の全盛期だった。アパレルやスポーツ用品などを扱うカタログ通販は無数にあったため、「ネットを使って通販を始めれば、アパレルやスポーツ用品会社を凌駕できるのではないかと考えた」と、和則氏は後に述懐している。
その言葉通り、ECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」は、他社を圧倒した。ネット通販の売り上げは2017年3月決算で1000億円を突破している。