そして、ヨドバシは2019年4月にアウトドア専門の石井スポーツを買収した。ヨドバシは他の量販店と異なり、企業買収・合併は行わず、株式を上場していない。サントリーホールディングス、竹中工務店などと並ぶ非上場の優良企業だ。これまでM&Aに手を出さなかったヨドバシが企業買収に乗り出したのは、「ヨドバシ・ドット・コム」でアウトドア用品の取り扱いを強化するためだった。
2018年末には酒類の販売を始めるなど、家電以外の商品のラインナップを増やしている。今後も、新規の品揃えをするつもりで、時間を買うための大型買収も視野に入れている。また、自社の社員が最短2時間30分以内に配達する「ヨドバシエクストリーム」など、競争力の高いサービスも積極的に始めている。
リアル(実店舗)とネット(インターネット通販)を融合する小売業のオムニチャネルは、セブン&アイ・ホールディングスに君臨した鈴木敏文氏の専売特許ではない。「この分野でヨドバシカメラが抜きんでている」と、アナリストから高い評価を得ている。
リアル店舗で激突する“千葉戦争”
リアル店舗では、ガチな対決も迫っている。ビックカメラとヨドバシカメラが激突する“千葉戦争”だ。
2022年11月をめどに、JR千葉駅東口に「ビックカメラ千葉店(仮称)」が新規出店する。ビックカメラは千葉県内では船橋市と柏市に店があるが、千葉市に出店するのは初めてで、4店目となる。
千葉駅東口のバス乗り場の正面に建設されている商業ビルに入居し、1~9階までの売り場面積は約1万2600平方メートル。旗艦店である池袋本店を上回る大型店となる。売り場の一部に、知名度の高い専門店を入れ集客力を高める方針だ。
千葉店の立地は、駅とヨドバシカメラの店の間に割って入る。JR千葉駅(東口)から「ヨドバシカメラ千葉店」に流れる客を遮断する格好になる。ビックとヨドバシは東京・新宿で中規模店舗が隣接しているが、大型店同士が並ぶのは初めてのこと。早くも、“千葉戦争”と呼ばれ、ビックvsヨドバシの勝敗の行方に関心が高まっている。