ホワイトハウスのプレスルームでは徹底した消毒が行われ、取材にも大きな支障が出ている(Sipa USA/時事通信フォト)
そもそも、74歳のトランプ氏が、たった数日で病院から逃れて仕事ができるまでに回復することなどあるのだろうか。医師団の説明によれば、トランプ氏はステロイド剤の投与を受けたという。ステロイドは強い抗炎症作用があるため、ウイルスに侵された呼吸器などの症状を抑えることはできるかもしれない。しかし、それは根本治療ではないだけでなく、体に負担は大きく、精神にも影響を与える。認知機能障害や気分の高揚・落ち込み、睡眠障害などの可能性もあり、世界を滅ぼすだけの核ミサイルのボタンを握るアメリカ大統領が、そのような状態で執務してよいのか、十分な検証が必要だ。
大統領選挙も、予定通りに進められるとは思えない。10月15日と22日に予定されているテレビ討論会はどうなるのか。対策、戦略ができたとしても、感染リスクを排除して討論することは不可能に思える。オンラインで実施されれば、これまた前代未聞のことである。そして、11月3日の投票日を待たずに症状が悪化した場合は、果たして投票は行われるのだろうか。
世論調査では、トランプ氏とバイデン氏の差はさらに開きつつあり、もはや勝敗は動かないところまできている。バイデン氏も、いつまでもトランプ大統領を口汚く攻撃するのではなく、名誉ある撤退を促すべく、最大限の敬意を示して呼びかけるタイミングに来ているのではないだろうか。バイデン氏は、トランプ氏がマスクを着用せず、ソーシャル・ディスタンスも守らなかったことを非難し、感染の責任は本人にあると述べている。
下記は、CNNで報じられたオバマ前大統領の言葉である。これを見ると、バイデン氏とオバマ氏の人間としての器の違いを感じざるを得ない。
「(妻の)ミシェルと私は、アメリカ合衆国大統領とファーストレディ、そしてコロナウイルスに感染したすべての人々が、必要とするケアを受けていることを期待している。彼らが迅速な回復への道にあることを期待している」