国内

足立区議の性的マイノリティ差別発言で読み取れる時代の変化

性的マイノリティへの差別的発言が大きな波紋を広げた足立区の白石正輝・区議(共同通信イメージズ)

性的マイノリティへの差別的発言が大きな波紋を広げた足立区の白石正輝・区議(共同通信イメージズ)

 大きな批判を呼んだ「L(レズビアン)だってG(ゲイ)だって法律に守られてるんじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」という東京都足立区の白石正輝・区議の性的マイノリティへの差別的な発言。そもそもどうしてこのような発言が出るのか。長年ジェンダー問題に取り組んできたジャーナリストの治部れんげ氏と、LGBTが働きやすい職場づくりを支援し、LGBT関連の調査なども実施しているNPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀氏が、その背景にある問題について語り合った。

 * * *
治部:こういう人に意思決定を任せていたら、地域が滅びますよ。『「男女格差後進国」の衝撃』という本の中にも書いたんですけど、人口が減っていたり、経済的に立ち行かなくなったり、労働力が減っている地域って、昔ながらの保守的な価値観を残しているところが結構ある。そうするとやっぱり、若い人が嫌になって出て行ってしまうんですね。若い女性が戻ってこないとか、男らしさを押し付けられることに違和感を覚えるような男性が「ちょっと無理」みたいな感じになったり。多分、この区議の発言ってそういうことと同じ枠組みにあると思う。まず、論理的に根拠がないですよね。村木さんのご著書(『虹色チェンジメーカー』)の中に、世界の同性婚承認国を示している地図がありますよね。そういう国と比べたとき、日本での出生率がどうなのか、足立区はどうなのかっていうことが言えるといいかもしれないですね。

村木:実は欧米の同性婚承認国の中には、出生率が下がっていないばかりか、むしろ上がっている国もあるんです。日本でも女性カップルをはじめLGBTで子どもを持つ方も増えています。私はそういう方たちとつながりが深いのですが、みなさん、今回の発言にはものすごくショックを受けていました……。この区議は「自分の周りには(LGBTが)いないから理解できない」とも言っていますが、周囲だって「絶対にこんな人には言えない」って思っていますよね。こんな発言をしていると、ますますLGBTが見えなくなるんです。

治部:最近は、このような差別的な発言は放置してもらえなくなりましたね。6年前の東京都議会での塩村文夏都議へのセクハラやじの時も、やじを飛ばした議員の特定と処分を求めるオンライン署名が「9万筆」集まりました。ちなみにこの署名の発起人は男性でした。

村木:5年前の海老名市議による「同性愛者は『異常動物』発言」のときも、市議会が辞職勧告を可決していました。

治部:(10月)12日(月)に足立区議会のホームページに、鹿沼昭・区議会議長名でお詫びが掲載されました。これによると、議長は、白石議員に公の場での謝罪と発言の撤回を強く求めたそうです。その結果、本人から謝罪と撤回の申し出があったということでした。当初、メディアの取材に対して開き直っていた白石議員が態度を一変させたこと、区議会議長がそれを求めたことは、時代の変化を感じます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン