「医療機関を通じた精子提供では、提供者がHIVやB型肝炎、梅毒などの感染症にかかっていないか、二等親以内に重篤な遺伝性疾患を持っている人がいないか徹底的に調査します。
さらに、リスクを下げるために6か月間、冷凍保存し長期の検査を経た精子を使用します。SNSやマッチングサイトを通じた精子提供はチェックが不充分でリスクが高い。安易に利用するべきではありません」
医療機関でのAID(非配偶者間人工授精)が望ましいというが、年々、AIDを実施する医療機関は減っており、その理由に“出自を知る権利”があげられる。
「慶應義塾大学病院では、精子提供ドナーになる際に『子供が自分の出自を知りたいとなった場合、精子提供者の情報を開示する可能性がある』という告知を開始しました。現在の法律では、精子提供をした子供から認知や財産分与を求められる可能性があるため、ドナーが激減。AIDを受けたい人の新規受け入れを停止せざるを得なくなりました」(医療関係者)
マッチングサイトを通じて精子提供を受け、シングルマザーで第1子を出産した女性はこう語る。
「自分の選んだ方法を、すべての人が認めてくれるとは思っていません。でも、どうしても血のつながった子供が欲しかった。精子提供で産んだ子なんて、と否定する人もいますが、生まれてきたわが子を見たときに、この決断は間違いではなかったと確信しました。もしかすると、私の子供は一生、遺伝上の父親を知ることができないかもしれません。でも、その分、愛情を注いで育てています」
子供を持ちたいと願う多くの人が、安全に出産をするため、そしてすべての子供が幸せに生きるため、法制度の拡充が望まれている。
※女性セブン2020年10月29日