ライフ

血中マイクロRNAの解析で膵臓がんの早期発見が可能に

膵臓がんの早期発見方法に進展か(イラスト/いかわ やすとし)

膵臓がんの早期発見方法に進展か(イラスト/いかわ やすとし)

 膵臓がんの初期は自覚症状に乏しく、発見されたときは進行していることが多い。そこで膵臓がんの早期発見に繋がると期待されているのが、リキッド・バイオプシーだ。体液(血液、尿、唾液など)から、膵臓がんに特異的に発生するマイクロRNAを分離して検査する。ただ採血の状況や分離する条件で結果が大きく変わるため、最適条件に基づいた適切な検査を構築する研究が進んでいる。

 がんによって5年生存率は違う。例えばステージIの肺がんの5年生存率は71.2%で、乳がんでは実に95.2%と高い。一方、膵臓がんは39.9%であり、すべてのがんの中で最も低い。膵臓がんは進行が早く、発見されても、かなり症状が進行しているケースが多く予後も悪い。

 膵臓がんの検査は血液検査と超音波検査で行なう。これらの検査結果の他に膵臓がんのリスク因子である糖尿病や慢性膵炎が確認でき、膵臓がんが疑われる場合は造影CT検査、造影MRI検査、超音波内視鏡検査などで診断。さらに最近では、もっと手軽に早期発見が可能になる検査としてリキッド・バイオプシーの研究が進められている。

 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科の光永修一医長に話を聞いた。

「バイオプシーというのは組織を採取して検査すること。リキッド・バイオプシーとは血液などの体液の中に浮遊する腫瘍組織の一部を採取し、検査する方法です。直接、腫瘍組織を体内から採取する方法と比較して簡便に実施できるメリットがあります」

 リキッド・バイオプシーの検査は3種類ある。腫瘍細胞そのものを体液から採取する方法はすでに乳がん検査で行なわれている。また腫瘍細胞そのものではなく、体液中に出た腫瘍組織由来のDNAやRNAを採取し、検査する方法の研究が進行中だ。

 がんの種類により、検査に用いる腫瘍由来成分に何を使うかが違う。膵臓がんの場合、血液に出てくるがん組織由来の腫瘍細胞やDNAの量が非常に少ないので、早期発見を目的としたリキッド・バイオプシーには向かない。しかし、治療においては採取した遺伝子を検査した上で効果がある薬を探したり、術後の患者で血中腫瘍細胞を発見した場合には転移の可能性を考慮して抗がん剤を増やすといった応用が行なわれ始めている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン