そのような状況を踏まえ、早期膵臓がんの発見に役立つのでは、と考えられているのが、血中のマイクロRNAだ。
「マイクロRNAはDNAと同じ核酸です。マイクロRNAは細胞の中で他の遺伝子が使われる量を調整する役割を担うと考えられている10個未満の短い配列RNAとなります。膵臓がん患者の血液中には特有のマイクロRNAがあり、それが特定されつつあります。この中から、早期診断に役立つものを探し出し、検査として確立する研究を行なっています」(光永医長)
研究室レベルでは血液中から、マイクロRNAを採取しての早期膵臓がんの診断が可能とされている。ただし、採血の条件や分離などにより、結果に大きな差が出ることもわかってきた。現在、それらの条件の最適化を目指し、よりよい研究が日夜積み重ねられている。少量の血液から、早期膵臓がんを特定できる日も、そう遠くではない。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2020年10月30日号