国内

官邸のテレビ監視記録 文書の存在自体がメディアへの牽制

桜を見る会問題が追及されて以降、10か月にも及びテレビの放送内容が記録されていたという(時事通信フォト)

桜を見る会問題が追及されて以降、10か月にも及びテレビの放送内容が記録されていたという(時事通信フォト)

 総理になってからの菅義偉氏は、記者会見では笑顔を絶やさず、マスコミ懐柔にも努めている。だが、菅氏には別の面がある。長く官邸を牛耳ってきた彼は、官僚たちを使って報道を監視してきたのだ。その証拠となる記録文書を本誌・週刊ポストが入手した。

 文書には〈〇月〇日の報道番組の概要〉〈内閣広報室 担当〇〇〉と記名があり、その日のテレビ番組が列挙され、一部のコメンテーターの発言が抽出されている。東京都内の男性が情報公開請求したもので、桜を見る会問題が追及された今年1月までの10か月間に、菅氏をトップとする内閣官房がテレビの放送内容をチェックした記録である。

 文書は255枚にも及ぶ。毎日番組を観続けて文字に起こした職員たちの労力は相当だろう。

 取り上げられた番組は、朝の『スッキリ』(日本テレビ系)、『モーニングショー』(テレビ朝日系)、『とくダネ!』(フジテレビ系)、昼の『ひるおび!』(TBS系)、夜は『報道ステーション』(テレビ朝日系)、『NEWS23』(TBS系)、週末は『日曜討論』(NHK)、『サンデーモーニング』(TBS系)など。

 発言をピックアップされたコメンテーターの顔ぶれも興味深い。数が多いのが、『NEWS23』に出演する元朝日新聞の星浩氏と、『報ステ』に出演する元共同通信の後藤謙次氏だった。

監視対象が官邸入り

 本誌・週刊ポスト2020年6月5日号では、同様の手法により内閣官房がテレビ番組をチェックした記録の一部を入手し報じた。その際、「政府がどのように報じられているかチェックするのは当然」という声が寄せられたが、桜を見る会に限った今回の文書を見ると、意図的に官邸が意識している一部ジャーナリストらの発言だけを収集しているのが分かる。

 この膨大なる監視記録の目的は何なのか。文書に何度も名前が登場する政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう見る。

「メディアへの牽制のために作られているのではないか。発言を収集し、評論家やジャーナリストの足をすくう材料を探している。私自身、新型コロナに関するテレビでの発言内容について、内閣官房から反論されたことがありました(*注1)。

 また、公文書の公開に消極的な官邸が、この記録文書については情報公開請求に応じ、あえて『ある』ことを示したことにも何らかの意図を感じてしまいます。文書の存在を示すこと自体が、メディアに対する牽制になっているのではないか」

【*注1/今年3月5日放送の『モーニングショー』で、伊藤氏がコロナ特措法について「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払拭するため」とコメント。それに対し、内閣官房が公式ツイッターで番組を名指しし、異例の反論を行なった」

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン