実は平安、室町といった時代にまで歴史を遡ると、なんとも自由な着物文化が花開いており、色遣いからして豊穣なその系譜にこそ、連なりたいと片野氏は言う。
「今回調べてみて痛感したのは、日本人はとんでもなくオシャレだったということ。そして何をどう着るかも含め、何事も決定権は歴史でも伝統でもなく、自分にあるということ。格を重んじたい人のことまで否定するつもりはありません。そうやってそれぞれのオシャレを自由に楽しむことが、実は最も歴史や伝統に適っている気が私はするので」
片野氏にとって着物とは、「非日常を、手っ取り早く楽しめるアイテムの一つ」。そんな定義の自在性もまた、彼女の凛とした背筋の一部なのだ。
【プロフィール】
片野ゆか(かたの・ゆか)/1966年東京都生まれ。東洋大学社会学部卒業後、求人広告誌の営業職を経て文筆業に。2005年『愛犬王 平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞。著書は他に、2011年に漫画化され、林遣都、中川大志出演による映画化(来年公開)も決定した『北里大学獣医学部 犬部!』や『犬が本当の「家族」になるとき』『ポチのひみつ』『ゼロ!熊本市動物愛護センター10年の闘い』『動物翻訳家』『平成犬バカ編集部』『竜之介先生、走る!』等。162cm、B型。
構成■橋本紀子 撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2020年11月6・13日号