思えば、この夜の出演者は今様の第7世代から見れば大先輩、笑いの歴史を知らない口さがない人に言わせたら旧世代である。談志、たけしの系譜を受け継ぎ、毒と暴走を期待される太田。そして太田以上に談志・たけしにコミットした高田。松村、山田も太田とほぼ同時代を走り続けている芸人だ。その彼らが演じた「やさしい」芸には、若手と違う年季の違い、深みがあった。
惚れた芸人を思い入れいっぱいに語り尽くした山田の芸。その山田の揚げ足をとることなく、微笑ましくツッコみ続けた太田の包容力。対象へのリスペクトが込められた松村のモノマネ。それらが渾然一体となって笑いを生んだ。
そして亡くなった春一番の話題の末尾、その場をシメた高田の言葉が「やさしさ」を芸にする意味を教えてくれる。まさに江戸前の精神で。
高田「おい、そう言えば春一番、最近見かけないな。あいつどうしてる?」
◆取材・文/岸川真(作家)