越智:私にとっての永遠の悪女は、有吉佐和子さんの小説『悪女について』の富小路公子(きみこ)です。謎の死を遂げた稀代の女実業家・公子に関わった27人の男女へのインタビューという構成で書かれた小説なんですが、人によって、公子の印象はまるで違う。その多面性こそが時代を経ても変わらぬ悪女の神髄なのだと思います。
──悪女3部作(『モンスターU子の嘘』『女優A』)を書き終えて、越智さんが今後書きたい女性を教えてください。
越智:韓国ドラマで「愛の不時着」や「梨泰院クラス」を差し置いて、2019年から2020年のドラマ大賞を総なめにした「椿の花の咲く頃」というドラマがあるんです。コン・ヒョジン演じるヒロイン、ドンベクがとても魅力的。はじめは自己評価がすごく低いんですが、ある出来事をきっかけにしたたかに開花していく。その開き直り方がとても好きなんです。今後、書きたいのはドンベクみたいに伸びしろが大きい女性。さらに自らの悪性に目覚め、軽やかに開き直ることができる、黒を白にひっくり返せる「ネオ悪女」を書けたらいいなと思います。
◆おち・つきこ/1965年福岡県生まれ。大学在学中よりライターとして活躍。2006年、短編集『きょうの私は、どうかしている』でデビュー。