さらに、大統領選が近づくにつれ、トランプ氏を目にする機会も増えていた。バイデン氏よりトランプ氏の方が集会を数多く開いて演説していたため、取り上げるメディアも増加した。集会の数だけでなく、張りのある声に大きな身振りや手振り、時には踊り出すトランプ氏の方が映像的には面白い。支持者たちの熱が伝わってくるようなトランプ氏の集会は圧倒的に絵になる。トランプ氏が猛追できたのは、これらを連日報じ続けたメディアの存在が大きいだろう。
単純接触効果とは、同じ対象に何度も繰り返し触れていると、その対象を好ましく感じるという心理的傾向のことを言う。熱烈な支持者たちの様子やタフなトランプ氏の姿を何度も目にすることで、寝ていた隠れトランプを呼び起こす効果があったかもしれない。どちらに投票するか決めかねていた有権者にも、トランプ氏に票を投じるきっかけを作ったかもしれない。
4日までにバイデン氏が獲得した票は、大統領候補として歴代最多の7000万票を超え、「私たちが勝者になると信じています」と述べたバイデン氏。だが、どちらが大統領になっても互いの支持者は対立し、分断してしまった米国の溝はさらに深くなるだろう。不快で悪いイメージしかない対象に繰り返し触れれば、それだけ嫌悪感や反感が増す。ここにも、単純接触効果が関わっているようだ。次の4年、米国にはどんな未来が待っているのだろうか。