アルバイト感覚で不正レビューを請け負うユーザーは少なくない。間には仲介業者が入ることも多く、ユーザーを募集するのにはSNSや仕事仲介サイトなどが使われる。実際FacebookやTwitterなどのSNSで「Amazonレビュー」などで検索すると、多くのレビュアーを求めるグループやアカウントが見つかる。そこでは、報奨金付きのレビューを求める企業などからの投稿と、それに対する応募が多数見つかる状態だ。
応募したユーザーはAmazonで指定商品を購入した後、指定通りのレビューをつける。その後、商品代金の返金を受け、商品を転売することで利益としたり、一回500円程度の謝金を受け取ることが多い。やらせレビューの対象となるのは、イヤホンやモバイルバッテリー、USBケーブルなどの電化製品が多くなっている。
なおAmazonガイドラインには、以下のように書かれている。「対価と引き換えることを目的にレビュー投稿を依頼する、または投稿することを条件に、対価を受け取ることを要求する行為は禁止」「競合他社の商品に対して批判的なレビューを投稿すること金銭を受け取ってレビューを投稿していることがわかった場合にも削除」。つまり、不正レビューはもちろん、アルバイトとしてのレビュー投稿は禁止行為であり、削除対象になるのだ。しかし、現状は残念ながらガイドラインに違反したレビューが蔓延している状態だ。
コロナ禍で影響を増す「レビュー」
このような事態の背景には、多くのAmazonユーザーが、購入の際に値段・送料に次いでレビューを参考にしていることが影響している。
モニタリングサービスのFakespot社によると、コロナ禍でオンラインショッピングが増えた3月から9月のレビュー投稿720万件を検証したところ、信頼性に欠けるとされたのは前年同期の約36%から約42%に増加した。不正レビュー以外にも、ライバル企業のリスティング(検索連動型)広告をクリックして広告費用は上げるが、売上は上がらない事態にするなどの行為も行われている。
このような事態は全世界で起きており、中国などでは罰せられることもあるという。一方、日本ではレビューを規制する法律はないが、内容によっては名誉毀損罪や信用毀損罪、景品表示法違反などにあたる可能性もある。
不正レビューは年々巧妙化しており、かつてのように日本語がおかしいとか、点数分布が不自然などだけでは見破れないことが増えている。Amazonは毎週投稿される1000万件ものレビューに対して投稿の信頼性を分析する他、規約に違反するユーザーにはアカウントの停止や禁止、法的措置などの対策もしているが、いたちごっこの状態だ。
米国の「FAKESPOT」や日本の「サクラチェッカー」など、不正レビューを見破るツールも登場している。オンラインショッピングは便利だが、残念ながら、出品者側も購入者側も不正レビューから自衛するリテラシーが求められているのだ。