ライフ

Amazonやらせレビュー問題 SNS経由「500円で募集」が常態化

Amazonレビューは便利だが……(時事通信フォト)

Amazonレビューは便利だが……(時事通信フォト)

 Amazonのレビュー欄で故意に低評価をつけ競合他社の信用を傷つけたとして、2020年9月、福岡市内にある健康食品・器具の通販会社の役員の男が信用毀損罪で罰金刑を受けて話題になっている。Amazonは不正なやらせレビューに汚染されており、売上を上げるためだけでなく、ライバル会社の足を引っ張る場にもなっているという、ユーザーのあいだで噂になっていたことが、法で裏付けられた形だ。インターネットのトラブル実態に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、Amazonにおける不正レビューの実態について解説する。

 * * *

 Amazonのレビューは信用できない、と感じたことがある人は、少なくないだろう。

「点数も高いし、よほどいい商品なのだと思って購入したのに、すぐに壊れたことがある。よく見たら5つ星だけでなく1つ星もたくさんついていることに後で気がついた。5つ星はたぶんやらせで、実際に買ったユーザーは1つ星をつけていたのに気づかなかった。レビューの日本語がおかしいとかいうこともあって、最近は本当に良い商品がわからなくなって困っている」と、Amazonを日常的に使っている30代女性はいう。

 Amazonでは、購入を検討する商品の多くに、ユーザーからのレビューがついている。商品名と出品者(販売業者)表示のすぐ下には評価の平均が1~5の☆によって示され、そのページ内リンクをクリックすると、その評価の内容を見ることができる。そのとき、最初に表示されるのは☆の数が多い高評価レビューで、同時に☆が1~5がどのくらいの割合でつけられているのかもわかる。あくまでユーザーが任意で投稿するレビューなので、人気商品ならば何千、何万とつくが、ゼロという場合も珍しくない。だが、このユーザーによる評価やレビュー内容を購入検討時に参考にする人は多い。それを悪用する業者がいるらしいと噂はされていたが、刑事罰を受けた業者がいる。

 事件のあらましはこうだ。2018年1月、あるサプリメントに対して1週間で2商品に9件の低評価がつき、商品の売上が2割下がる事態となった。普段、低評価レビューは月に1件あるかないか。不審に思った販売元の会社の社長である男性が投稿者名を検索すると、仕事仲介サイトにたどりついたのだ。男性社長は投稿者である女性と依頼主の男性役員を苦労して特定し、警察に被害届を提出した。

 逮捕された男は、仕事仲介サイトで商品レビューの仕事を募集。応募してきた福岡県内の40代女性に対して500円を支払い、ライバル企業である男性の会社のサプリメントに低評価をつけさせていたのだ。40代女性は商品を使ったことがないにも関わらず、「粒が大きくて飲みにくい」などの商品をおとしめる感想と星一つの低評価をつけていた。

 不正レビューには、大きく分けて主に2つの手法がある。高いレビューを集中的に投稿することによりランキングを上げたり、価格と評価を対象にアルゴリズムによって自動的に選ぶユーザーへのおすすめ商品の印である「Amazon’s Choice」に選ばれるようにして売上を上げる手法と、ライバル企業の商品に低いレビューを集中的に投稿することにより信用を毀損し売上を落とす手法だ。このようにAmazonは欲しいものがたいてい見つかるし、ユーザーの検索や購入履歴から好みに合いそうなものをすすめてくれる便利な面もあるが、一方で不正レビューに汚染されているのも事実だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」に同行された愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、皇室とご自身の将来との間で板挟み「皇室と距離ができればこうした仕打ちがある」という前例になった眞子さんの結婚 将来の選択肢を“せばめようとする外圧”も 
女性セブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
「ピットブル」による咬傷事故が相次いでいる(左・米軍住宅参考画像)
《沖縄で相次ぐピットブル事件》「チェーンを噛みちぎって引きずった痕も…」自治体が狂犬病の予防接種すら把握できない“特殊事情”「米軍関係者の飼い犬だった」 
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルの飛行機でスヤスヤ》佳子さまの“寝顔動画”が拡散…「エコノミークラス」に乗った切実な事情
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
ロスで暴動が広がっている(FreedomNews.TvのYouTubeより)
《大谷翔平の壁画前でデモ隊が暴徒化》 “危険すぎる通院”で危ぶまれる「真美子さんと娘の健康」、父の日を前に夫婦が迎えた「LAでの受難」
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン