聖心会シスターの鈴木秀子さん
布団に入って体を休めるような感覚で死の床に──
鈴木:私の周囲に飛び込み自殺を図ったものの、幸いにして助かったという青年のお母さんがいます。そのかたによれば、後日、息子さんは「あの頃は本当に疲れ果てていて死のうという気力さえなかった。そんな状態でホームにいて、電車が近づいて来たら、スーッと吸い込まれるようにして飛び込んでいた」と話していたのだとか。
江原:ああ。
鈴木:そのお母さんが「ちゃんと心が目覚めているときは死ぬなんてことはできないのではないか」と言っていたのが印象的です。
江原:私も同じことを考えていました。これは個人的な見解なのですが、三浦春馬さんにしても、竹内結子さんにしても計画的に死んだのではないと思うのです。フッと楽になりたいという発想が脳裏を過り、お布団に入って体を休めるような感覚で死の床に就いたのではないかと。
鈴木:あるいは発作的に「もう何もかもどうでもいい」といった強い感情に襲われ、なんとなく死へ誘われてしまったのかもしれませんね。実は今日、伺ってみたいと思っていたことがあります。
江原:はい。なんでしょう?
鈴木:江原さんは「自殺願望が頭から離れない」という相談を受けたらどうアドバイスしますか?
江原:言霊を意識して暮らしてくださいとお伝えします。「死にたい」と思ったら「生きたい」と口にすることなのです。
鈴木:言葉の力というのは本当に大きくて、自分が言った言葉に心が添っていくということがありますからね。
江原:充分な睡眠をとってエネルギーをチャージしてくださいということも伝えます。けれど人に相談できる人は、おそらく大丈夫なのです。
鈴木:ええ。自死を防ぐために最も有効なのは人に苦しみを打ち明けることだと私も思います。ところがコミュニケーションが苦手だという人もいれば、プライドが邪魔をしてできないという人もいます。
江原:そういうかたがいたら、シスターはどのようにアドバイスをなさるのですか?
鈴木:人に苦しみを打ち明けることがなぜ重要かというと、心を整理することができるからなのです。だとしたら、話す相手は人でなくてもいいわけで。私は神様に打ち明けてみてはどうでしょうかとおすすめするでしょう。私自身も実践していることです。
江原:シスターも悩ましい問題に直面することがあるのですか?
鈴木:もちろん。一難去ってまた一難というのは世の常ですから。とにかく私は礼拝堂へ行き、「今日、こんな悪心を抱いてしまいました」といった反省も含め、愚痴も嘆きも弱音もすべて神様に打ち明けるのです。神様は何時間でも話を聞いてくださいますよ。
江原:確かに。神様の前では清らかな誓い以外はしてはならないと考えてしまいがちですが、そんなことはないのですね。いずれにしても自分の宗教を持っている、つまり神様の存在を信じている人は強いなと感じます。
【相談窓口】
「日本いのちの電話」
ナビダイヤル0570-783-556(午前10時~午後10時)
フリーダイヤル0120-783-556(毎日午後4時~午後9時、毎月10日午前8時~翌日午前8時)
【プロフィール】
江原啓之(えはら・ひろゆき)/スピリチュアリスト、オペラ歌手。一般財団法人日本スピリチュアリズム協会代表理事。1989年にスピリチュアリズム研究所を設立。主な著書に『幸運を引きよせるスピリチュアル・ブック』『予言』『守護霊』『聖なるみちびき』『幸せに生きるひとりの法則』『あなたが輝くオーラ旅33の法則』『人間の絆』など。
鈴木秀子(すずき・ひでこ)/聖心会シスター。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。フランス、イタリアに留学。スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授を経て国際コミュニオン学会名誉会長。聖心女子大学キリスト教文化研究所研究員・聖心会会員。主な著書に『今、目の前のことに心を込めなさい』など。
構成/丸山あかね
※女性セブン2020年11月19日号