ソ連軍の軍服にサングラス、メーキャップの専門家を呼び顔や手まで白くした

ソ連軍の軍服にサングラス、メーキャップの専門家を呼び顔や手まで白くした

「我が輩は将軍ミシマスキー」

 発掘された写真の中には、三島が変わったデザインの軍服を着ているものがある。自衛隊の制服ではない。本多氏がその理由を明かす。

「自衛隊員と楯の会会員が敵・味方に分かれ、敵の大将を拉致する訓練を実施したときの写真です。三島先生が敵の大将役を買って出たので、我々は先生を乗せた装甲車の進路に丸太を投げ入れて止め、包囲して大将を引きずり出す算段だった。装甲車を止めて後部座席を見たら、先生はソ連軍将校の軍服を着て、サングラスをかけ、顔も手も白粉で真っ白だったので、ビックリした。

 装甲車を降りた先生は、『我が輩は将軍ミシマスキーだ』と大笑いしたので、みんなつられて爆笑の渦に巻き込まれたのです」

 このときの“体験入隊”は1か月間に及び、現役自衛隊員が実施するのとほぼ同じ内容の訓練だったが、三島がこうして皆を笑わせることもあったという。

 他の写真を見れば、楯の会の会員らが本気で訓練に参加していたことが伝わってくる。この訓練から1年8か月後、三島は市ヶ谷駐屯地で自衛隊に決起を呼びかけた後、割腹自殺を遂げる。

 三島研究で知られる関東学院大学国際文化学部の富岡幸一郎教授は、「私も見たことのない写真で驚いた」と評価したうえで、三島の行動についてこう分析する。

「三島が文学的にも行動的にも大きく変わり出すのは、まさに楯の会を結成した昭和41年頃からです。この年の6月に発表した『英霊の聲』では、二・二六事件の将校と特攻隊の英霊が、天皇の人間宣言を厳しく批判し、10月には林房雄氏と対談した『対話・日本人論』で、天皇論や日本人論を展開したが、行間には死への決意が溢れていました。

 つまり、この年から文学と行動という文武両道の実践が始まり、死へ向かって疾走した。およそ4年の間に、楯の会を結成し、最初は一人で自衛隊に体験入隊し、会員に軍事訓練まで施したが、自衛隊が決起しないことを悟り、自決に至ったのです」

 三島の最期をめぐり、空白となっていた軍事訓練というピースが、これらの写真で埋まったと言えるだろうか。

※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号

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