免疫学の第一人者である大阪大学名誉教授の宮坂昌之氏は、11月18日付けの毎日新聞ネット版で、90%以上というワクチンの有効性についてこう語っている。
「『有効性』とは、ワクチンを打たなかった人(非接種者)の発病率を1としたときに、接種してその発病率がどのぐらいの割合に下がるかを推定したものを言う。『9割の有効性確認』を言い換えると『ワクチンを打たずに発病した人の9割は、ワクチンを接種していたら発病しなかったはず』ということを表している」。臨床試験で高い「予防効果」は確認出来たものの、「ワクチンを接種すれば94.5%の人が感染しない」と断定するものではないのだ。
このように、同じ情報であっても、伝え方次第で捉え方や見方が変わることを「フレーミング効果」という。ファイザーもモデルナも、「接種すれば90%以上の人は感染しない」のではなく、感染した人の90%は打っていれば感染しなかった“かも”ということなのだ。
ワクチンの有効性の高さばかりに目を奪われるが、モデルナの治験者数はまだ3万人に過ぎず、サンプルサイズにこそ注意しなければならない。人は数値を示されると、それを鵜呑みにしてサンプルサイズに目を向けない傾向があると言われる。少数のサンプルによる結果でも、十分に正しいデータが得られていると思い込みやすいのだ。まして、全世界で一日も早いワクチンの開発が望まれているのだから、希望のある明るいニュースは好まれやすく、数値ばかりが独り歩きしやすい状況でもある。
もちろん、まだワクチンが完成したわけではないが、高い有効性が示され、副反応についても「明らかな安全性の懸念は報告されていない」と言われても、効果の持続性など分からないことは多い。田村憲久厚生労働大臣は、11月13日の衆議院厚生労働委員会で、ワクチンについて「国民にしっかりと情報提供したうえで、本人の意思に基づき、それぞれの判断で打ってもらう」と述べた。飛び交う情報をどこまで信じて良いのか判断するのは自分次第だ。慎重になるかリスクを覚悟するか。いよいよ接種が可能になった時、あなたならどちらを選択するだろうか。