薄毛ネタは5ちゃんねるでは「いじり」の定番で、AA(アスキーアート=文字や記号を合わせて作った絵)では、薄毛の男が寂しそうに後ろ手を組みながら「また髪の話してる」と歩くものなど、多数のバリエーションが存在する。
そして、薄毛の男が逮捕された場合は毎度このAAが登場し、「やはりハゲだったか!」などといじるのだ。中には「自称・ハゲ」も登場し、「オレでもここまではハゲてない」などと書き込む。ネットのこうした流れについては、「犯罪行為を批判するのは当然だが、容姿いじりで盛り上がるのはどうか?」と思う。
こうした「ハゲいじり」「無職中年男性いじり」が毎度盛り上がるのは一体なぜなのかと考えると、ポリティカル・コレクトネスが重視される昨今、この2つの要素が最後に残った「バカにしていい(と勝手に思っている)存在」なのでは。他にも「デブ男」「汗臭いオタク男」などもバカにされるが、子供、女性、高齢者、LGBTQ、主婦、特定職業、身体障害者などをネタにするのは良くない、という認識が強まり、最後に残った対象が「ハゲ男」「無職中年男」なのだ。この2つの属性は差別の対象外とでも思っているのか。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。近刊に『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。
※週刊ポスト2020年12月11日号