念願のタワーマンションを手に入れたのに(イメージ)
夫の憧れだった東京湾岸エリアのタワマンに、今年2月に入居したという畑山ゆり子さん(仮名・20代)は「第3波」と、コロナ禍がこれ以上続くことで、夫との離縁も考えていると言う。
「夫(30代)の強い希望で購入したタワマンは約6000万円。高過ぎるとも思いましたが、オリンピックもあるし絶対に値上がりするし、資産としても価値があると言われて押し切られる形でした。同じ頃子供も生まれて、東北の田舎にある実家に里帰りしました」(畑山さん)
その直後、東京を中心に国内でのコロナ感染者の数が急増。出産から3ヶ月ほどで新居に戻ろうとしていたが、感染が怖く、実家にいることにしたという。ところが夫は「なぜ新居に住まない」と激怒。
「夫としては、子供と一緒に暮らすためにマンションを買ったのに、と口惜しいようなのですが、それよりも感染が怖い。やっとコロナが落ち着いてきたし、そろそろ戻ってもいいねって話していたところで、第3波。懸念を夫に話すとまた怒ってしまって」(畑山さん)
夫はITエンジニアで、会社はリモートワークを推奨している。いざとなれば、自宅を売却し、畑山さんの暮らす安全な田舎で暮らすこともできそうだが……。
「事前にそういう想定もしていたのですが、買ったばかりなので手放したくない。だから今のマンションを借りてくれる人を探そうとしたら、全然いないんです。もし見つかっても、コロナの影響で賃料まで下がったとかで、貸しても赤字。ヤケになった夫は、不動産屋に行って家を売ろうともしたそうですが、査定は購入した時よりも1000万円近く低かったんです」(畑山さん)
結局、貸すにも貸せず、売るにも売れず。このまま第3波と感染拡大が続けば、畑山さんはずっと都心には戻ることができない。夫との溝も深まるばかりで、この先に待っているのは「離婚」しかないという。
コロナによって「不動産」の価値が激変し、翻弄されている2人の話を紹介したが、その変化に乗って自宅を購入したという人からも、不透明な先行きに対する不安の声が聞こえてくる。都内の流通コンサル企業勤務・辻川良徳さん(仮名・40代)がいう。
「ちょうど自宅を買おうとしていたところで、コロナが発生。会社が在宅ワークを推奨するようになり、それなら郊外の広い家でもいいと思って、夏の終わりに新居を購入、すぐに引っ越しました」(辻川さん)
ところが、コロナ感染者数が落ち着いてきたからか、会社は一転「週の半分は出社するように」と命じてきたのだという。北関東の新居から、会社までは電車を乗り継ぎ片道1時間半、通勤だけで往復3時間もかかる。
「抗議しましたが、郊外に家を買ったお前の責任だろうと言われ……。第3波がきて、また在宅勤務が増えると思っていたのですが、上司は『もう休むわけにはいかない』と今回は強気です。都心に家を持っている同僚も『都心回帰してもらわないと困る』と私の在宅勤務に冷ややかです」(辻川さん)
どんな立場にいても、隣の芝はやはり青く見える。いずれにせよ、コロナ禍が続く限り、こうした「悲喜交交(こもごも)」があらゆる場所に露見し、人々の心を荒ませていくのか。