「戦略的忍耐」をどこまで続けられるか
バイデン政権の発足により、シンガポールでの共同声明の有効性を認めるかどうかが焦点となるだろう。おそらくトランプ政権の政策を否定し、圧力を強める方針に軸足を置くことになる可能性がある。
2018年6月にシンガポールで米朝首脳会談に臨んだトランプ大統領と金正恩氏(AFP=時事通信フォト)
つまり、バイデン政権は北朝鮮との交渉には慎重な姿勢を取るということだ。大統領選中のテレビ討論で金正恩委員長を「暴漢のような男」と呼んだことからも、北朝鮮との交渉のテーブルにつく可能性が低いことを示している。
バイデン政権はオバマ政権の「戦略的忍耐」を踏襲する可能性もあるが、これを行った場合、北朝鮮へ核兵器と弾道ミサイル開発の時間を与えることになる。
これに対して北朝鮮は、バイデン政権の関心を引くため、あるいは、反発の意思表明を行うために、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や開発中の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験などを再開する可能性がある。問題は、日本列島を飛び越すような実験をするのか、日本海でとどめるかだ。
仮に太平洋に弾道ミサイルを撃ち込まれた場合、バイデン政権は何らかの行動を起こさざるを得なくなるだろう。