バイデン政権にタフネゴシエーターはいるのか
先に述べたように、武力行使という選択肢はない。バイデン政権に残された道は、北朝鮮の行動を無視して「戦略的忍耐」を行うか、過去の「核危機」のように、交渉能力に秀でた外交官と専門家を起用し、北朝鮮との交渉のテーブルにつくかの二者択一しかない。
交渉を行うにしても北朝鮮の外交官は手強い。北朝鮮は対米関係を最も重視しているため、対米交渉では姜錫柱(カン・ソクジュ)、金桂冠(キム・ケグァン)といった次官級の外交官を起用してきた。
今度は米国を専門としてきた崔善姫(チェ・ソンヒ)第一外務次官が北朝鮮側の交渉を主導することになるだろう。問題は米国側である。対北朝鮮政策に詳しい人物や米朝交渉の経験者はトランプ政権ですべて排除されてしまったからだ。
バイデン政権が北朝鮮との交渉に臨むことになった場合、トランプ政権で排除された対北朝鮮政策に精通した人物を招集できるかどうかが交渉の成否を左右することになるだろう。
しかし、一度失った人材は簡単には戻ってこない。バイデン政権は北朝鮮とのタフな外交交渉ができる人材やブレーンを探すことから始めなければならないだろう。トランプ政権の4年間で失ったものは、あまりにも大きい。