国際情報

バイデン政権の北朝鮮政策 挑発無視して「戦略的忍耐」か

バイデン氏はどこまで北に強硬姿勢を取れるのか(AFP=時事通信フォト)

バイデン氏はどこまで北に強硬姿勢を取れるのか(AFP=時事通信フォト)

 米大統領選で勝利を確実にしているジョー・バイデン氏。次期政権の重要政策のひとつといえるのが「対北朝鮮外交」だ。トランプ政権は史上初となる米朝首脳会談を実現させ、北朝鮮の非核化交渉などを進めてきたが、バイデン政権へ移行したら米朝関係はどうなってしまうのか──。ジャーナリストの岡田翔氏が予測する。

 * * *
 バイデン政権の誕生により、トランプ政権が進めた北朝鮮との非核化交渉は振り出しに戻ることになった。それによりトランプ政権の4年間は空白となり、北朝鮮に核兵器開発と弾道ミサイル開発の時間を与えてしまった。

 トランプ大統領の米朝関係における最大の功績は、史上初の米朝首脳会談の開催に成功したことだろう。米朝首脳会談は、2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月27~28日(ハノイ)、2019年6月30日(板門店)で開かれた。

・シンガポール/共同声明で朝鮮半島の非核化を約束
・ハノイ/物別れ。北朝鮮は寧辺核施設廃棄と引き換えに制裁解除を要求
・板門店/非核化交渉の再開で合意。実務者協議は2019年10月に開催し決裂

 いずれも金正恩委員長のペースで進められたといってもいいものだった。

 米朝首脳会談は結果的に無意味になってしまったが、これは、トランプ大統領の最大の問題点が、国益と自分の利益を混同していたことにあった。経済制裁を強化したとはいえ、トランプ大統領が自画自賛しているうちに、北朝鮮に軍事力強化の時間を与えることになったのだ。

米国が北朝鮮に武力行使できなかった理由

 これまでの米国の政権がそうだったように、バイデン政権に移行しても対北朝鮮政策が行き詰まることは目に見えている。つまり、バイデン政権はこれまでの政権と同じことしかできないのだ。

 北朝鮮に核兵器と弾道ミサイル開発を中断させるためには、少なくとも米朝関係が緊張した1990年代から2000年代にかけての「第1次核危機」「第2次核危機」の時のような粘り強い2国間交渉が必要となるだろう。この時期、米朝交渉はじつに30回以上行われた。

 トランプ大統領は金正恩委員長へツイッターを通じた「口撃」で危機を煽り、米朝関係はチキンゲームの様相を呈していた。1994年には北朝鮮への武力行使が具体的に検討されたが、それが実行に移されることはなかった。その理由は米国側の損害があまりにも大きいからだった。具体的には次のような内容が検討された。

 1994年5月4日、在韓米軍司令官(ゲリー・ラック大将=当時)が“米朝開戦時”の被害について言及した。

「北朝鮮は国境地帯に8400の大砲と2400の多連装ロケット発射機をすえており、ソウルに向けて最初の12時間で5000発の砲弾を浴びせる能力がある。もし再び戦争となれば半年がかりとなり、米軍に10万人の犠牲者が出るだろう」

 これとは別に、ペリー国防長官(当時)がシャリカシュビリ統合参謀本部議長(当時)に先制攻撃計画の策定を命じ、核燃料棒交換作業が進行中の1994年5月18日に作戦検討会議が開かれた。作戦計画は米軍がF-117ステルス戦闘爆撃機や巡航ミサイルで、核関連施設が集中している北朝鮮西部の寧辺にある施設を空爆するというものだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
ナンバープレートを折り曲げ集団走行する「旧車會」=[福岡県警提供](時事通信フォト)
《各地で増える”暴走”》駐車場を勝手に旧車會の集合場所とされた飲食店主「100台以上も…他のお客さんが入って来られん」と怒り
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン