今年10月、平壌の軍事パレードに登場した北朝鮮の新型大陸間弾道ミサイル(AFP=時事通信フォト)
ところが、ドン・オーバードーファー著『二つのコリア』(共同通信社、1998年)によると、作戦計画に沿って検討した結果、全面戦争に発展した場合、
●朝鮮半島で戦争が勃発すれば、最初の90日間で米軍兵士の死傷者が5万2000人、韓国軍の死傷者が49万人に上るうえ、北朝鮮側も市民を含めた大量の死者が出る。
●財政支出(戦費)は610億ドル(筆者注:現在のレートで約6兆3000億円)を超えると思われるが、同盟国からの資金供給はほとんど期待できない。軍指導部の面々は大統領にそう話した。
●さらに、朝鮮半島で全面戦争が本格化した場合、朝鮮の都市環境下で近代兵器の途方もない殺傷能力が発揮されると、死者は100万人に上り、うち米国人も8万から10万人が死亡する。
●米国が自己負担する費用は1000億ドル(同約11兆円)を超える。戦争当事国や近隣諸国での財産破壊や経済活動中断による損害は1兆億ドル(同111兆円)を上回ると試算された。
このブリーフィングが行われた日(1994年6月16日)、ラック在韓米軍司令官とレイニー駐韓大使の秘密会談で、本国からの指令を待たず「在韓米国人8万人の避難計画」を進めることで合意した。
これは20年以上前の話だが、現在の北朝鮮軍の戦力は、韓国に脅威を与える通常戦力こそ低下しているものの、短距離弾道ミサイルの精度向上と、長距離弾道ミサイル及び核兵器を保有したことにより、より脅威度が高くなっている。米国が北朝鮮に武力行使した場合は、1994年当時の想定よりも多くの損害が出るだろう。