師走に入ってもコロナ禍の深刻化が止まらない。そんな中、早くも年賀状の準備を始めた人々もいるだろう。“年賀状スルー”が叫ばれる一方で、こんな時季だからこそ心を込めた年賀状を、という人もいる。ジャーナリストの山田稔氏が最新の年賀状事情を探った。
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2020年の年賀状発行枚数は過去最低の19億4198万枚で前年比17.8%の大幅減となった。10年連続の減少で、減少率は過去最大である。ピーク時の2003年の発行枚数は約44億6000万枚だったから、17年間で半分以下に落ち込んだことになる。
ところが、今年は思わぬ出来事があった。10月29日の発売直後、販売サイトに「嵐年賀状」と「『鬼滅の刃』年賀はがき」の注文が殺到する騒動が起きたというのだ。年賀状にこれだけ大きな注目が集まったのは久しぶりではないか。
とはいえ、年賀状を取り巻く環境は厳しさを増す一方だ。販売枚数と実際の配達枚数の差は数億枚あるとの報道もある。配達する郵便局員の負担も大きい。元日の配達は、働き方改革に逆行するシステムだ。11月27日に改正郵便法が成立し、来年秋にも土曜日配達と翌日配達が廃止される見通しだ。この先も、年賀状だけ特別扱いが通用するのだろうか。
そもそも年賀状はいつごろから慣習として定着したのだろうか。年賀状の原型は古くは平安時代にあったというが、国民の間で年賀状を出すことが定着したのは明治20(1887)年前後だという。年内に受け付けて元日に配達するシステムとなったのは、年賀郵便制度を導入した明治32(1899)年からだ。国民レベルでは百数十年の歴史があることになる。
その歴史ある年賀状文化だが、ここ数年「スルー」派が増えている。メールやツイッター、フェイスブックなどSNSに押される一方のうえ、人生の終活を控えリセットしようという高齢者も増えているのだ。このまま衰退の一途となってしまうのか。