それが毎日のように繰り返されるのである。支持者はその時間にFOXニュースにチャンネルを合わせ、反対者はCNNやMSNBCにかじりつく。ギャランティも放映権料も払わずに生中継できるこの舞台は、どちらにとっても貴重でありがたいコンテンツだった。
演説の中身はお粗末なものが多かったが、親しみやすく、力強く、ダイナミックで陽気なトランプ氏が舞台を去ると、アメリカは暗い雰囲気に満ちるだろう。コロナ危機はますます深刻だ。バイデン新大統領にその対応を期待するしかないが、バイデン氏の記者会見や演説は、はっきり言って退屈で眠くなる。せっかちなアメリカ人記者たちの質問に、78歳のバイデン氏はついていけない。見ているほうがイライラしてくる。データがあるわけではないが、これでは視聴率もさぞ低いだろうと容易に想像できる。
反トランプのメディアが溜息をついている一方で、トランプ氏は選挙後に呼びかけた献金が180億円も集まったという。その何割かは選挙戦で使った経費の穴埋めや法廷闘争の資金になるのだろうが、ずいぶん手残りがありそうである。一説によると、トランプ氏は自分を裏切ったFOXにも見切りをつけ、自ら新しいトランプ・チャンネルを立ち上げる準備を進めているという。4年後の再出馬を見据えた計画なのだろうが、衰えぬ人気と類まれなパフォーマンスを考えれば、純粋に事業として期待できるのではないか。実は筆者も、まだトランプ劇場を見納めたくはないと思ってしまう一人なのである。