「旦那が老人ホームに入っちゃって、家に1人でいてもつまんねぇから、バスに乗ってはるばる仲間と優しい久美ちゃんに会いにくるわけよ」(74歳)と顔をくしゃくしゃにして笑い、酒を傾ける女性客に「お~い飲みすぎるなよぉ」とあちこちから声がかかる。
昭和5年から酒屋と角打ちを続けてきた店には、港町で働く男たちやおひとりさま女性客の姿も。誰もが上機嫌だ
「昔、久里浜には魚の加工場もあって俺は全国の港に魚を運んでた。あの頃は港ごとに(小指を立てて)コレもいたもんだ、なんちゃって(笑い)。ここは楽しい酒飲みばかり。俺は雨の日も雪の日も浦賀から50分かけて来るのが日課。浦賀の叶大明神(叶神社)にお参りしてから毎日来ているんだから、ペリーも驚くぞ」(70代、元トラック運転手)
「俺は30年毎日4時から男。人生色々、ここも面白い人がおるね。ファミリー感のある店なんだよ」(70代)
「車の仕事一筋だったからね、引退してからこんなに楽しい店に出会えてよかったよ。ここへ来ると楽しいことしかない。こんなに和む店はほかにはないね」(70代、元自動車工場勤務)と語る客は妻も一緒。夫婦で通ってきているという。
いつしか久里浜の日は沈み、客らの調子はますますノリノリ。陽気なほろ酔い面々に、通い歴40年という常連が「俺は鯛、あんたは虎魚(おこぜ)、君はゲソ」(70代、元魚屋)と合いの手を入れて皆がどっと笑う。
ご機嫌な笑い声が響く店で皆が愛飲するのは焼酎ハイボールだ。
焼酎ハイボールと女将特製ぬか漬けきゅうりの相性は抜群だ
「さっぱりした辛口だからずっと飲んでいられるよね。店の立て札に“立ち飲みは15分まで”って書いてあるけど、誰ひとり守ってないでしょう?仲間と愉快に飲むうまい酒は15分じゃ足りないね」(60代)
(※2020年10月28日取材)