国内

看取りの専門家「生き尽くした末の自然な死は苦しくない」

(写真/GettyImages)

怖いのは”死”そのものよりも、その過程で味わう“苦痛”(写真/GettyImages)

 老親がそう遠くない未来に迎える最期のとき。家族にとっては寂しいことだが、必ず訪れる人生のゴールで、親が有終の美を飾る瞬間だ。恐れや悲しみに暮れることなく、心穏やかに見守りたい。

 そのためにも、人の死がどのように訪れるか、どんな準備が必要か、知っあておくことが大切だ。訪問医療を推進し、これまで2000件を超える看取りを行ってきたホームオン・クリニックつくば院長の平野国美さんに聞いた。

生き尽くした末の自然な死は苦しくない

 漠然と考える死はやはり怖い。それは(当然だが)、経験者が周囲にいないからだろう。さらに現代人は、身近な人が老い衰えて亡くなる一連の流れに接する機会も少ないから、唐突に訪れる見えない恐怖のように感じるのだ。しかし人が何より恐れるのは、死そのものよりも、そこに至るまでに味わうかもしれない“苦痛”ではないかと、平野さんは言う。

「実は、自然な死の間際には苦痛はほとんどなく、むしろ夢見心地のようになります。それは死に向かうときに現れる3つの現象によるものといわれています」

 まず寿命が近づいてくると食べなくなる。体内に炎症性の物質が増えて食欲もなくなり、消化のためのエネルギーも乏しくなる。すると体内にケトン体と呼ばれる物質がたまる。ケトン体には多幸感が得られる作用があるのだ。また、呼吸が浅くなるため二酸化炭素がたまり、意識障害を起こす。いわば天然の“麻酔”状態だ。

 そして極めつきは「エンドルフィン」。苦痛から解放するために生理的に分泌されるもので、ランナーズハイと同じ状態。幻覚作用があり、亡くなった人がお迎えに来たり、花畑や三途の川を見たりするというのも、この脳内麻薬のせいだといわれている。

「これは、命を生き尽くした末に訪れるもの。がんや心・肺疾患、認知症などきっかけになる病気があっても、それらにより生体が衰弱して、最期は同じ境地に至ります」

 がんに関しては、医療麻薬が使えるなどの緩和ケアのしくみもあり、苦痛なく過ごせる体制が整っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン
“原宿系デコラファッション”に身を包むのは小学6年生の“いちか”さん(12)
《話題のド派手小学生“その後”》衝撃の「デコラ卒アル写真」と、カラフル卒業式を警戒する学校の先生と繰り広げた攻防戦【『家、ついて行ってイイですか?』で注目】
NEWSポストセブン
収監の後は、強制送還される可能性もある水原一平受刑者(写真/AFLO)
《大谷翔平のキャスティングはどうなるのか?》水原一平元通訳のスキャンダルが現地でドラマ化に向けて前進 制作陣の顔ぶれから伝わる“本気度” 
女性セブン
「池田温泉」は旅館事業者の“夜逃げ”をどう捉えるのか(左は池田温泉HPより、右は夜逃げするオーナー・A氏)
「支払われないまま夜逃げされた」突如閉鎖した岐阜・池田温泉旅館、仕入れ先の生産者が嘆きの声…従業員が告発する実情「机上に請求書の山が…」
NEWSポストセブン
バラエティ、モデル、女優と活躍の幅を広げる森香澄(写真/AFLO)
《東京駅23時のほろ酔いキャミ姿で肩を…》森香澄、“若手イケメン俳優”を前につい漏らした現在の恋愛事情
NEWSポストセブン
柳沢きみお氏の闘病経験は『大市民 がん闘病記』にも色濃く反映されている
【独占告白】人気漫画家・柳沢きみお氏が語る“がん闘病” 今なお連載3本を抱え月産160ページを描く76歳が明かした「人生で一番楽しい時間」
週刊ポスト
芸能界の“三刀流”豊田ルナ
芸能界の“三刀流”豊田ルナ グラビア撮影後に語った思い「私の人生は母に助けられている」
NEWSポストセブン
ラーメン二郎・全45店舗を3周達成した新チトセさん
「友達はもう一緒に並んでくれない…」ラーメン二郎の日本全国45店舗を“3周”した新チトセ氏、批判殺到した“食事は20分以内”張り紙に持論
NEWSポストセブン