アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の人気が止まらない。公開から2か月が過ぎた現在も観客動員数1位をキープし続け、興行収入は300億円に迫る勢いだ。歴代1位(同308億円)の『千と千尋の神隠し』を追い抜くことはほぼ確実な状況のなか、その人気は中国にも及んでいるという。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんがレポートする。
* * *
爆発的ヒットを記録した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。その人気は中華圏にも飛び火しつつあり、特に中国では人気が高まっているという。まだ映画は公開されていないというのに、北京市には主人公・炭治郎の名前を店名にした焼き肉店が登場するなど、便乗商法まで出ている始末だ。それだけに、「鬼滅の刃」は中国市場でも大ヒットを飛ばす可能性があるのではないか。
「テレビアニメ版の『鬼滅の刃』は中国の動画配信サイト『bilibili』でも公開されています。現在までの累計再生回数は5億7000万回を記録していて、最近中国で配信された日本アニメでは人気ナンバーワンです。今年に入って中国語吹き替え版の配信も始まるなど、まだまだ人気は高くなるでしょう」
こう話すのは、著書に『中華オタク用語辞典』(文学通信)がある八子氏。在日中国人で、中国のサブカルオタクとして日中のアニメ事情に精通している。
「中国は人口が多いので、1クールのアニメの再生回数が1億回を超えることはそれなりにありますが、『鬼滅の刃』は2クールで5億7000万回と、異例のヒットと言えます。ただ、配信サイトでアニメを見るのは楽ですから。映画館まで行ってお金を払ってくれるお客がどれほどいるかは未知数です。
現在、中国映画市場における日本映画の興行収入1位はアニメ映画の『君の名は。』ですが、ファミリー層だけでなく、恋愛映画だったのでカップルのデート需要も取り込めました。少年マンガの『鬼滅の刃』にはそういう広がりはないでしょうから、動員数はコアなファンの数で決まると思います」(八子氏)