次に「来る」のはファンタジー系ドラマ

 韓国ドラマといえば、ラブコメや時代劇、ほのぼの系ホームドラマ、マクチャンドラマ(ドロドロの愛憎劇)などが定番。特にラブコメ率は高く、医療ドラマかなと思ったらラブコメ、サスペンスドラマかなと思ったらラブコメというほど、これまでどんなドラマにも「ラブライン」と呼ばれる、登場人物が恋に落ち結ばれるまでの駆け引きを無理やり入れることが多かった。しかしここ数年韓国では、「ラブラインの無いドラマ」という宣伝文句が登場するほど、ラブコメ以外のドラマのニーズが強くなっており、これが日本と韓国の人気ランキングに差が生まれる一つの理由ではないかと思う。

 今韓国で人気急上昇中なのが、これまであまり無かった「ファンタジー系」ドラマだ。現在放送中の『驚異的なソムン』(ソムンは「噂」の意、主人公の名前でもある)は、韓国ウェブコミック配信サイト「DAUM WEBTOON」で連載されたマンガが原作のスリラー×ファンタジードラマ。人に取り憑き殺人を犯す悪霊と、悪霊を退治する「カウンター」と呼ばれるヒーローたちの物語で、カウンターは、普段は「クッス(韓国式そうめん)食堂で働いているが、悪霊を感知すると客を放置して出動、それぞれが持つ驚異的な能力で悪霊をやっつけ人々を救う。1話、2話と回を重ねる度に注目を集め、12月13日放送された6話の視聴率は全国平均7.7%、最高視聴率8.3%と高視聴率を記録。ケーブルテレビドラマの歴代視聴率TOP5に入りそうな勢いである。

『驚異的なソムン』は、『愛の不時着』を制作した「スタジオドラゴン」の作品。大手制作会社の作品にも関わらず、この頃韓国ドラマでよく見られるスポンサーの商品を無理やりドラマの中に登場させて視聴者の失笑を買う、といったことが無いのも好感を得ている要因だろう。これまでの韓国ドラマでは、突然スーツのポケットから真空パックキムチを取り出して主人公に差し出し、キムチをクローズアップするといったあからさまなシーンも度々見られたが、こんなことをされるとそれまでの感動が台無しだ。制作やスポンサー側も、そうした姑息な描写が逆効果であることを意識し始めているのかもしれない。

『驚異的なソムン』は、ケーブルテレビの放送に加え、韓国のNetflixでも配信されている。SNSでの評判を見ると、好きな時間に観られるNetflixで観る人がかなりいるようで、Netflix韓国版の「総合TOP10」1位になるほど大人気だ。近々日本でも配信されれば、来年話題さらう人気ドラマとなるのではないだろうか。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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