井上:私は六本木で働いていた時にテレビ朝日の人に声をかけられて、伊東四朗さんが出ていた番組に「百恵ちゃんのそっくりさん」として出演し、テレビに出はじめたんです。今だから言いますけど、嫌だったんですよ。撮影は似せるためにカメラアングルも決まっていて窮屈で。似せなくてはいけないという使命感でやっていましたが、ご本人やファンの方たちに申し訳ない気持ちでいっぱいで。
寺島:私は聖子ちゃんと言われても、髪型が同じだっただけで(笑い)。『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』というタイトルの映画も作られたし、完全に日活さんの戦略でしたよね。当時は音楽活動も並行していて、持ち歌のほかに、劇場の舞台挨拶では「青い珊瑚礁」を歌ったこともありますよ。たしか、私がデビューした年に山口百恵さんが引退して。
井上:その少し前に松田聖子さんがデビュー。私たちと逆ですね(笑い)。私も舞台挨拶で地方に行った際に「プレイバックPart2」を歌いましたね。当時、私は深く考えずただ流れに乗ってしまったところもあるのですが、ロマンポルノでいちばん思い入れがあるのは、やっぱりこの『ピンクカット』ですね。
寺島:日活はさすが映画会社だけあってプロの集団でした。スカウトされてポンと放り込まれて、できないなりに必死に食らいついた2年間でした。照明さんや音声さん、監督さんなど現場のスタッフさんに映画作りのイロハを教わったいい思い出がいっぱいです。15本どの作品にも思い入れがあるので、すべてがいちばんです。
井上:今私は子供も成人し、夫と静かに暮らしています。
寺島:うちは娘も息子も俳優としてスタートラインに立ったばかりなので頑張って見守っています。お互い元気でよかった。今度は当時のみんなも交えてまたお会いしましょうね。
【プロフィール】
寺島まゆみ(てらしま・まゆみ)/1961年生まれ、東京都出身。19歳の時に日活ロマンポルノ『宇能鴻一郎の貝くらべ』でデビューし、15本のロマンポルノ作品に出演。歌手活動やラジオパーソナリティなどで活躍。長女は女優の行平あい佳、長男は俳優の小林卓生。
井上麻衣(いのうえ・まい)/1960年生まれ、長野県出身。83年、『ピンクカット 太く愛して深く愛して』で日活ロマンポルノにデビューし、その後7本のロマンポルノ作品に出演。ほかテレビドラマ出演やLPレコードも発売され、人気を博した。
※週刊ポスト2020年12月25日号