2021年の開催の現実味は…(時事通信フォト)

2021年の開催の現実味は…(時事通信フォト)

 我々の多くが開催に反対しているのは、「現在」だけを見ているから。つまり、感染拡大の渦中にあるから開催に拒否反応を示しているだけであり、「将来に備えてのことを考えている」私たち(小池知事ら)からしたら見方が短絡的なんだよね、と言うわけである。

 なんだろう、この上から目線は。一般の国民や都民もすでに一年近くコロナ漬け生活を強いられており、その脅威に対する感覚はだんだん鋭くなってきている。オリンピックが開催される来年の夏までに、それに相応する「収束」が可能かと言ったら難しいであろうと、多くが経験則から感じているわけで、感染者数が現在増えているから脊髄反射的に五輪NO!と叫んでいるわけではない。そのあたり、小池知事は、国民や都民をナメてないか。

打ち勝つ証!としての東京大会だなんて

 また、小池知事はこんなことも言っている。

〈「世界の方々は、このコロナウイルスに打ち勝つ、その証しとしての東京大会(と受け止める)。そしてその後、冬季の北京大会、さらにはその後のパリ大会につながっている」と話した。「東京のコロナ対策がしっかり行われないと、では4年後のパリはどうなるのでしょうか」「まずは東京で成功させていかなければ、パリにも大きな影響を与えることになります」と訴えた〉

 打ち勝つ!証としての東京大会だなんて、その特攻精神みたいな意気込みはなんなんだ。精神主義で開催される五輪なんて御免だよ、という感想しか浮かばない。さらに、次のようなことも言っている。

〈小池氏は、政府や都、大会組織委員会が多岐にわたる感染対策を講じる予定であり、世論は変わると信じていると述べた。「人々は、このコロナ対策はしっかり行われていくと、むしろ希望を求めると、そう確信を持っています」〉

 これもどうだろう。政府や地方自治体が感染対策に苦慮してきたことは認めるが、それが適切なものであったかどうかは、大いに疑問がつく。アベノマスクは失笑するしかなかったが、その後のGoTo政策はいちいちタイミングがズレていなかったか。

 東京都をはじめとする都道府県の知事たちは、ちょうど先日、飲食店などへの時短要請を延長したところだが、それも適切な対策なのだろうか。私は、時短よりも、一時に入店する客数を三分の二や半分に制限するほうが感染対策として有効な気がしている。時短をすれば、短くなった営業時間に客が集中して密が生じやすいわけで、それより営業を長いままにして席をまびいたほうが効果的ではと思うのだ。

 それはともかく、これまでの政府や地方自治体が感染対策にはいくつもの難点があり、「政府や都、大会組織委員会が多岐にわたる感染対策を講じる予定」と改めて言われても、なら安心ですねと、世論が開催賛成のほうに変わるとは到底思えない。

 神戸大学医学研究科感染症内科教授の岩田健太郎氏は、今月10日に配信され『Web Sportiva』のインタビュー記事の中でこう指摘している。

〈Jリーグはルヴァンカップ決勝ですら、基準を満たさなければ中止とか延期にしますと発表する。やらない基準が明確だというのはすばらしいことで、それはクレディビリティ(信頼性)を高く保てるんですよね。そこまで果断ができれば信用できるということです。ところが東京五輪については、相変わらずそれが明示されない。根拠を何も示さずに、とにかくやる、やると言ったらやると。日本あるあるの、『もう決めたことだから』という、一番ダメなものの決め方です。本当はリスクヘッジというものはあらゆる可能性をオープンにしておいて、状況に応じて対応するものですが、それがなくて議論はしないというのは、最低ですよ〉

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン