国内

東京五輪、世論が開催賛成のほうに変わるとは到底思えない

小池百合子都知事の会見もよく生中継され、発言に注目が集まる(時事通信フォト)

そもそも現状のコロナ対策は適切といえるのか(時事通信フォト)

 今年も残すところ10日あまりとなった。延期された東京五輪はどうなるのか。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

 * * *
 この原稿の執筆日も、東京都で過去最多の感染者数が確認されている新型コロナウイルス。いわゆる第3波が続いているということなのだろうが、この先どうなっていくのか見当がつかない。いずれ季節性インフルエンザと同じような感じに落ち着いてくれればいいのだけれども、それがいつ頃になるか不透明だ。来年いっぱいかかるのか、それよりもっと長引くのか、専門家たちの見解もいろいろだ。

 そんなコロナ問題に振り回されっぱなしだった2020年、師走の15日に、ひとつの世論調査結果が報じられた。今月11~13日にNHKが全国の18歳以上を対象に電話調査したもので、その中に「来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催についてどう思うか」という項目があった。

 結果は、「開催すべき」27%、「中止すべき」32%、「さらに延期すべき」31%。僅差ではあるが、「中止すべき」が一番多く、「さらに延期すべき」と足すと62%の人が、来年のオリンピック開催に否定的だったということになる。

 同じ調査は2か月前の10月にも行われており、そのときは「開催すべき」が40%、「中止すべき」23%、「さらに延期すべき」25%だった。比較すると、「中止すべき」と考える人がかなり増え、「開催すべき」がだいぶ減っている。

 感染拡大が続き、安全で有効だと言い切れるワクチンが開発されたわけでもないのだから、当然の反応だろう。世界に目を向ければ、多くの国が日本の感染状況よりもひどいことになっており、オリンピックで大量の外国人が国内に流入することに対する拒否感があるのも当然だ。無観客での開催を検討しているとも聞くが、選手やスタッフだけでも何万人もが長期間訪日するわけで、外国人観光客の入国が制限されている今、来年の夏までにそれが解禁され、世界の人々が大量に国境を行き来するというイメージは描きにくい。

 ところが、NHKのこうした調査結果が発表されても、新聞や民放テレビなどの他のマスコミのほとんどは、来年のオリンピック開催の可否について、ちっとも触れようとしない。オリンピックは巨大なイベントビジネスと化しており、テレビはその利権と密接に関係しているので、中止云々は触らぬ神に祟りなし、と知らんぷりしているのだろう。新聞にしても、全国紙はどこも民放キー局の大株主なわけで、やはり利害関係者ということで逃げ腰になっているものだと思われる。

 では、主催者である日本はこの問題をどう考えているのか。菅首相は問題にまったく触れない。橋本聖子オリンピック・パラリンピック担当大臣はホストタウンの視察に足を運んだり、パラリンピック選手と交流したりしているので、来年の開催ありきなのだろう。その根拠はぜんぜんわからないのだけれど。

 中止の意見に対して、見解を表明しているのは東京都の小池百合子知事ぐらいだ。小池知事は、今月15日、AFP(フランス通信社)のインタビューに応じる形で、以下のように言っている(時事通信の記事から抜粋)。

〈小池知事は、中止を考えざるを得ない状況にはどのようなことが考えられるかとの質問に対し、「それはありません」と答えた。また来年に延期された東京五輪の開催に、今では国民の多くが反対していることは認識しているものの、そのような懸念は払拭(ふっしょく)できるとの考えを示し、「国民や都民の皆さんは現在を見ています。私たちは将来に備えてのことを考えています」と述べた〉

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン