かつては自民党を飛び出したこともある二階氏。小沢一郎氏の横に座った(時事通信フォト)
野党幹部の孫の誕生日も覚えていた
この頃の興味深いエピソードがある。
「二階さんは小泉さんから郵政民営化特別委員長や国対委員長をまかされただけあって、国会対策に非常に長けていた。野党幹部の孫の誕生日まで覚えていて、プレゼントを贈る。そうした野党パイプを使って対決法案の審議をうまく進めていった」(野党議員)
第1次安倍内閣では党3役の総務会長(1回目)に就任、福田内閣と麻生内閣でも経産大臣を歴任して党実力者としてのし上がっていく。
派閥の拡大にも熱心だ。
二階氏は小泉郵政選挙(2005年)で大量に当選した小泉チルドレンのうち、選挙地盤が弱い比例代表の議員を取り込んで派閥を拡大し、一時は衆参20人近い勢力となった。
しかし、2009年総選挙で自民党は大敗。最もダメージが大きかった旧二階派は二階氏を除く衆院議員全員が落選し、派閥が消滅してしまう。前代未聞の敗北だった。
転んでもただでは起きないのがこの政治家の真骨頂だ。
二階氏は残った参院議員2人と伊吹派(志帥会)に合流し、伊吹文明氏が衆院議長就任(2012年)に伴って派閥を離脱すると、自ら会長に就任して二階派に衣替えさせた。いわば、派閥を“乗っ取った”のである。それが現在の二階派だ。
第2次安倍政権になってからは自民党は国政選挙で連戦連勝するが、二階派は選挙のたびに勢力を減らしながらも、無派閥の新人や他派の議員をスカウトして派閥を拡大してきた。
「二階さんは“数は力”の信奉者で、スネに傷を持つ議員でも来る者は拒まずの精神で受け入れる。派閥の議員の選挙応援には熱心だが、数多くの修羅場を経験してきた人だから、“落選したら補充すればいい”と割り切っているところがある」(二階派ベテラン議員)
そのため、スキャンダル議員や変わり種の個性派議員が多く、自民党内では「二階派は猛獣も珍獣も受け入れる動物園」と揶揄されているが、二階氏は平気の平左なのだ。