“腸活”という言葉が流行するほど腸内環境に重きを置く国民性だからか、私たち日本人の腸内環境は他国の人と比べても類を見ないほど良好だという。東京大学名誉教授の服部正平さんは、海外と日本の腸内環境の差について研究を重ねてきた。

「2016年に私たちのチームが発表した論文では、アメリカ人、フランス人、スペイン人、スウェーデン人、デンマーク人、オーストリア人、ロシア人、中国人、南米のペルーとベネズエラの先住民、アフリカのマラウイの先住民、そして日本人の腸内細菌を比較しました。

 すると、日本人はアメリカ人や中国人と比べて腸内のビフィズス菌が20倍ほども多かった。それ以外の腸内細菌の割合も地理的に近い中国ではなく、遠くのオーストリア人やスウェーデン人に似ていたのです」

 この腸内環境の差が新型コロナウイルス感染症に対峙する免疫に関係するのだろうか。服部さんが続ける。

「コロナは免疫にかかわる病気ですから、免疫系を司る腸内細菌が関係している可能性もありうる。私たちの論文を読んだ世界中の研究者が、まさに検証を進めているところです。ひとつ突き止めたのは、腸内細菌を変化させる原因の1つは、薬の『抗生物質』などの投与だということ。中国人とアメリカ人は含有する腸内細菌の種類と比率が似ていたのですが、両国ともに抗生物質の使用量が多い国です」

 一方、大和田さんは、普段摂っている日本特有の発酵食品が影響しているのではないかと推測する。

「腸内細菌は1000種類以上がすみ着いているとされますが、善玉菌には大きく『糖化菌』『乳酸菌』『酪酸菌』の3種があります。なかでも酪酸菌は便秘解消などに関係する重要な菌。それが日本食に欠かせない漬けものに含まれているのです。特にぬか漬けなどは酪酸菌の塊といっていいほど豊富。いくらヨーグルトを食べても成人の腸にはビフィズス菌は定着しにくいので、酪酸菌の補給がとても大事なのです」

 毎日の食卓に欠かせないみそにも、定期的な摂取で善玉菌を増やす効果のある乳酸菌が含まれる。原料である大豆と麹には食物繊維が多く含まれ、善玉菌のエサになる。具にはわかめなどの海藻類やきのこ類を選べば、さらに食物繊維を増やせる。どうやら私たちは、長い歴史の中で無意識のうちに体質に合った食文化を築いてきたようだ。

※女性セブン2021年1月7・14日号

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