故郷で農業と福祉を結び付ける元Jリーガー
この秋、代々木公園で野外音楽フェスに参加した。多くのミュージシャンに混ざって、元Jリーガーの巻誠一郎さんとセカンドキャリアについて対談した。
引退したとはいえ、鍛えられた体格が目をひく。話をしていくと、よく考えぬかれた言葉と信念の強さにすっかり魅了されてしまった。
巻さんはジェフユナイテッド千葉のストライカーだった。ロシアや中国のチームでも活躍。2014年から故郷の熊本に本拠地を置くロアッソ熊本に移籍した。
引退後は、熊本を中心にビジネスを展開した。初めはピザハウスを経営したが失敗した。「お金儲けには向いていないと感じた」という彼は、自分自身の強みを生かそうと、人の役に立つビジネスを考え始めた。故郷の熊本で、スポーツと教育と農業を結びつける仕事だ。
現在、障害をもつ子どもたちの放課後デイサービス「果実の木」を4店舗経営。障害者たちの就労支援や、農業と福祉を結びつける事業も考えているという。利益重視のビジネスマンらしくない実業家になりそうな気がする。
熊本地震の経験から、避難所や被災者に支援物資を送るシステムを作った。ぼくも被災地支援を続けているので、今度一緒に活動しようと意気投合した。
農業や木工。介護予防らしくない介護予防
農業は間口が広い。農業人口こそ減少の一途を辿っているが、49歳以下の新規就農者は、若干の増減がありながら一定数を占めている。農業法人にサラリーマンとして雇用されるという形の新規雇用就農者は年々増加しているという。
最近は、ドローンやロボット技術を駆使した「スマート農業」なども注目されている。こうした新しい農業の形が生まれるなか、農業を介護予防にしようとしている地域もある。高知県香美市では定年退職者を対象に、菜園クラブで農業指導を行なっている。土づくりから始まって、苗の植え付け、手入れ、収穫までを体験できる。一般に女性は趣味やボランティアなどの集まりに気軽に参加する傾向があるが、高齢の男性はなかなか腰が重い。家に閉じこもって孤独になること自体が、要介護の原因になりやすい認知症やフレイル(虚弱)のリスクを高めてしまう。