「嵐」×「夢」。2つのキーワードがつながり、皆川氏が嵐のデビュー曲『A・RA・SHI』を聴きながら、何気なく歌詞を読んでいた時のことだ。そこには、まさしく「夢」というワードが光る一節があった。それを、そのままメッセージにしようと思い立った。〈夢だけ持ったっていいでしょ?〉というこのフレーズをキーメッセージに、夢を持つことを応援するプロジェクトを立ち上げたい。嵐のメンバーに提案したところ、「いいじゃん!」と即決だった。
そしてこの趣旨に共感した、これまでCMなどに嵐を起用してきた13企業もプロジェクトに参加。スタート時期は2020年の秋頃と決まった。
コロナ禍で、嵐が最優先で考えたこと
しかし、その後世界は新型コロナウイルス感染症に見舞われることになる。さまざまな企画が中止になるなかで、皆川氏もこのプロジェクトをどうするか、スタッフや賛同企業、嵐と議論を重ねた。
「嵐の5人がいちばん気にしたのは、『夢』というテーマがポジティブすぎて、“今そんな気分じゃないんだよな”というように、価値観の押し付けになるんじゃないかということでした」(皆川氏)
その時皆川氏の印象に強く残ったのは、嵐の視野の広さ、人を思いやる愛情深さだったという。
「5人全員、メッセージを受け取る人の中に、いろんな立場の人がいて、どういう気持ちになるかということをいつも考えていました。ただ、そもそも夢を持つこと自体は自由のはずです。心の中に夢を持つということまで自粛したら、暗い世の中になってしまうんじゃないかと考えました。そこで時流には細心の注意を払いながら、心に夢を持っていいっていうのは言い続けようということで一致しました」(皆川氏)
当然、賛同企業側にもプロジェクトを継続するかどうかの懸念はあった。しかし、皆川氏は「会社にも絶対夢やビジョンがあるわけで、このコンセプトを説明すると、快く納得いただけました」と振り返る。
「一時は、本当に発信を控えるべきか心配もありました。“そんなことやっている時期じゃない”という意見が出てもおかしくなかった。でも一社一社と話し合って、踏ん張りましょう、と。嵐のメンバーも同じ気持ちでした」(皆川氏)
嵐の呼びかけで集まった100万個もの夢
プロジェクト始動と同タイミングでリリースされたジェネレーターコンテンツ『A・NA・TA for DREAM』は、『A・RA・SHI』の楽曲にのせて、ユーザーが入力した夢をAIが嵐の歌声で歌ってくれるというものだ。まるで本物の嵐が、自分の夢を歌ってくれるかのようなこのジェネレーターは、その精度も相まって、リリース直後から大きな反響を呼んだ。