「もっと美醜について語り合ったほしい」と話す

この本が、ルッキズムを語り合うきっかけになったら嬉しいと話す

◆「カワイイはつくれる」の危うさ

 では具体的に、ブサイク女子たちは「美人は得でブサイクは損」の二項対立をどのように乗り越えていくのか。

 たとえば「カワイイはつくれる!」を実践するブサイク女子たちがいる(『圏外プリンセス』『ヘルタースケルター』など)。美は天然でなくていい。化粧、ファッション、整形……技術と金によってカワイイをつくり、恋をし、自信を付けていく女子たちだ。一見、ポジティブで前向きな選択に感じられるが、“影”の部分もあるとトミヤマさんは指摘する。

「『カワイイはつくれる』という言葉は、『つくれるのにつくらないのは怠惰ではないか』に容易にひっくり返る、光と影のある言葉だと思っています。主体的にメイクテクを身につけたり、整形をするのならいいと思います。そうではなくて、周りの目が気になるからとか、怠惰だと思われるからとか、外からの圧力によって見た目を変えると、悲しい結末が待ち受けているように思うんですね。自分が綺麗になりたいと思っているのか、綺麗にならなければいけないと思わされているのか。ここをよく考えなければいけないと、少女マンガは教えてくれます」

 もちろん、皆が綺麗になりたいと望むわけではない。ブサイクのまま気高く生き、幸せを掴むヒロインもいる。たとえば『なかじまなかじま』の桜沢かすみだ。「最近、『自己肯定感』という言葉がよく使われるようになりましたが、彼女は自己肯定感の高い、いい生き方をしていますよね。著者の西炯子先生は、ひとひねりある物語を描くのがとても上手いと思います」(トミヤマさん、以下「」同)

 また、マンガならではの、美人とブサイクが入れ替わる物語には、美人になったとたん、性格が変わってしまう女の子が出てくる(『宇宙を駆けるよだか』『魔の顔』など)。外見は内面と深くつながっているという、当たり前のようで、忘れがちな事実を、フィクションは思い出させてくれる。

「“見た目”と“心”が仲良くないと、たとえ外見が変わったとしても、ポジィティブになれないと思います。ブサイク女子のマンガを読むことは、美醜の問題を考えることでもあるんですけど、私とは誰なのか、自己とは何なのか、という哲学的な話にもつながっていく部分があるんですね。重くセンシティブなテーマですから、漫画家の先生たちも相当の覚悟をもって真剣勝負をしている。気楽に読めないぶん、深い満足感を得られる作品ばかりを選ぶことができました」

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