国内

新史料vs『麒麟がくる』論争 明智光秀は本能寺に行ったのか

「乙夜之書物」(3巻本)の上巻の一部。1行目に「光秀ハ鳥羽ニヒカエタリ」と記されている=萩原大輔氏撮影、金沢市立玉川図書館近世史料館蔵

「乙夜之書物」(3巻本)の上巻の一部。1行目に「光秀ハ鳥羽ニヒカエタリ」と記されている=萩原大輔氏撮影、金沢市立玉川図書館近世史料館蔵

 1月4日付の朝日新聞に掲載された本能寺の変に関する新発見の史料で、歴史論争が勃発した。金沢市で発見された古文書『乙夜之書物(いつやのかきもの)』には、本能寺の変について、「光秀ハ鳥羽ニヒカエタリ」との記述があった。これが事実なら、「敵は本能寺にあり!」と叫んで自ら織田信長のもとに馳せ参じたという多くの歴史物語の描写は間違いで、明智光秀本人は本能寺から8キロも離れた鳥羽で吉報を待っていたことになる。

 折しもNHK大河ドラマ『麒麟がくる』のクライマックスが近づいたタイミングだけに、その描写はどうなるのか、そもそも本当に光秀は「後方待機」だったのか、歴史家や大河ファンの間でも議論百出である。『週刊ポスト』(1月15日発売号)では、史料を発表した富山市郷土博物館の萩原大輔・主査学芸員はもちろん、『麒麟がくる』の時代考証を担当した静岡大学名誉教授の小和田哲男氏らを取材し、この論争を検証している。ここでは、同特集で収録しきれなかったディープな歴史検証を紹介する。

 萩原氏が公表した史料は、これまでも存在は知られており、萩原氏も郷土博物館の学芸員の立場から、主に富山に関する記述を抜き出して研究していたという。同史料は、本能寺の変で光秀軍を率いたとされる斎藤利三の三男で、本能寺に従軍した利宗が加賀藩士の甥に語った証言を、同藩の兵学者・関屋政春がまとめたものだ。成立は本能寺の変の87年後の1669年である。又聞きを記したものだけに一次史料とは言えないものの、関屋の自筆で後世の加筆がないこと、光秀側の武将が情報源であることから注目を集めている。

 萩原氏は、史料が必ずしも真実を記しているとは断言できないと認めつつ、他の史料と突き合わせて、光秀は本能寺にいなかったとする説をとる。

「これ以前に知られている史料に、秀吉が書かせた『惟任退治記』(本能寺の変から山崎の戦いで光秀が死ぬまでを描いた書。惟任とは光秀のこと)がありますが、そのなかにも『光秀が途中に控えた』という記述が出てきます。また、本能寺で火の手が上がったのを確認してから光秀が動き出したという記述もある。これは光秀を討った秀吉の側が残した記録なので決定打にはならなかったものですが、今回は光秀側の証言で同じ内容が出てきましたから、光秀が本能寺にいなかったことが裏付けられたのではないでしょうか」

関連記事

トピックス

米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
女性初の自民党総裁に就いた高市早苗氏(時事通信フォト)
《高市早苗氏、自民党総裁選での逆転劇》麻生氏の心変わりの理由は“党員票”と舛添要一氏が指摘「党員の意見を最優先することがもっとも無難で納得できる理由になる」 
女性セブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン