明治の浮世絵師・楊斎延一が描いた「本能寺焼討之図」(共同)

明治の浮世絵師・楊斎延一が描いた「本能寺焼討之図」(共同)

 それに対し、『麒麟がくる』の時代考証を担当した小和田氏は、この史料の記述には疑問が残ると語る。

「報道で見たかぎりですが、おもしろい史料だなと思います。ただ、光秀が鳥羽にいたいうのはどうでしょうか。私は、これは本能寺の変ではなく、そのあと秀吉軍と激突した山崎の戦いの話ではないかと思います。光秀軍は丹波亀山城を出て、老ノ坂を越え、桂川を渡って京に入ります。そこから本能寺に向かうのと、洛外である鳥羽に行くのでは全く別方向になる。位置的にいうと、山崎の戦いの際に光秀が鳥羽にいたというならわかるのですが、本能寺の変だと疑問が残る。史料で証言者とされている斎藤利宗が記憶違いをしていた可能性もありますね」

現場となった当時の本能寺跡地には碑が残る(時事通信フォト)

現場となった当時の本能寺跡地には碑が残る(時事通信フォト)

 萩原氏はその疑問に対し、こんな仮説を唱える。

「当時、大阪には信長の三男である織田信孝が四国討伐軍を率いて駐屯していた。万が一、信長を本能寺で討ち逃した場合、信孝と合流する可能性があった。だから、京から大阪に向かう途中である鳥羽に控えたと想定できます。『惟任退治記』では、光秀が本能寺に向かった軍勢に遅れて動いたのは、信長の嫡男・信忠がどこにいるかわからずにいたところ、本能寺とも近い二条御所にいることがわかったので本隊が向かった、とされています。信長と信忠を同時に討つために、斎藤利三らと光秀の本隊が役割分担していたとも考えられます」

「麒麟」は本能寺に来たのか来なかったのか、歴史ロマンは尽きない。

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