明治の浮世絵師・楊斎延一が描いた「本能寺焼討之図」(共同)

明治の浮世絵師・楊斎延一が描いた「本能寺焼討之図」(共同)

 それに対し、『麒麟がくる』の時代考証を担当した小和田氏は、この史料の記述には疑問が残ると語る。

「報道で見たかぎりですが、おもしろい史料だなと思います。ただ、光秀が鳥羽にいたいうのはどうでしょうか。私は、これは本能寺の変ではなく、そのあと秀吉軍と激突した山崎の戦いの話ではないかと思います。光秀軍は丹波亀山城を出て、老ノ坂を越え、桂川を渡って京に入ります。そこから本能寺に向かうのと、洛外である鳥羽に行くのでは全く別方向になる。位置的にいうと、山崎の戦いの際に光秀が鳥羽にいたというならわかるのですが、本能寺の変だと疑問が残る。史料で証言者とされている斎藤利宗が記憶違いをしていた可能性もありますね」

現場となった当時の本能寺跡地には碑が残る(時事通信フォト)

現場となった当時の本能寺跡地には碑が残る(時事通信フォト)

 萩原氏はその疑問に対し、こんな仮説を唱える。

「当時、大阪には信長の三男である織田信孝が四国討伐軍を率いて駐屯していた。万が一、信長を本能寺で討ち逃した場合、信孝と合流する可能性があった。だから、京から大阪に向かう途中である鳥羽に控えたと想定できます。『惟任退治記』では、光秀が本能寺に向かった軍勢に遅れて動いたのは、信長の嫡男・信忠がどこにいるかわからずにいたところ、本能寺とも近い二条御所にいることがわかったので本隊が向かった、とされています。信長と信忠を同時に討つために、斎藤利三らと光秀の本隊が役割分担していたとも考えられます」

「麒麟」は本能寺に来たのか来なかったのか、歴史ロマンは尽きない。

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト