国際情報

米議事堂暴動取材の横田増生氏「アメリカの民主主義が死んだ日」

アメリカでいったい何が起きているのか?(写真/EPA=時事)

アメリカでいったい何が起きているのか?(写真/EPA=時事)

 トランプ氏と支持者らによる強烈な抵抗が続く中、いよいよ1月20日にバイデン大統領が誕生する。バイデン氏はアメリカをもう一度ひとつにできるのか、それとも“分断”はより加速するのか。同盟国である日本にも大きく影響してくる問題について、長年大統領選を取材してきた池上彰氏と、アメリカでトランプ陣営への潜入取材を続けてきた横田増生氏が緊急対談した。

 * * *
池上:1月6日午後(現地時間)、バイデン次期大統領の当選を正式に認定する手続きが行なわれていたアメリカ・ワシントンの連邦議会議事堂に武装したトランプ支持者が乱入し、5人が死亡する前代未聞の事件が起きました。横田さんはあの時、大混乱の現場で取材していたそうですね。

横田:そうなんです。僕が連邦議会の裏門に到着した時は、すでにトランプ支持者と警察が激しくやり合い、狂気や殺気を含んだ熱狂が充満していました。ほどなくごく近くで閃光弾が破裂し、私自身も警察の催涙スプレーを浴びて目を開けられないほどの激痛に襲われ、誰かが「中で女が殺された! 危ないから逃げろ!」と叫ぶのが聞こえました。トランプ支持者たちは裏門の横にある小窓を破って連邦議会内に侵入していましたが、僕は中に入ったら無事では戻れないと思って、その場に踏みとどまりました。その日はしばらく目が見えづらかったです。

池上:中に入っていたらトランプ支持者と間違われて銃で撃たれていたかもしれません。

横田:突入した連中は両目を催涙スプレーでやられて、何人も横たわっていましたね。

池上:トランプ支持者4人、警官1人が死亡した大惨事でしたが、何より衝撃的だったのは、連邦議会が占拠されたことです。アメリカという国の成り立ちは最初に連邦議会の地位が確立し、その後に大統領の権限が決められました。アメリカの民主主義の中心である連邦議会が襲撃されたのは、1814年に英軍がホワイトハウスを焼き討ちした米英戦争以来です。しかも自国民が連邦議会を襲うなんて“とうとうアメリカもここまで来たか”と絶句しました。

横田:おっしゃる通りです。僕は思わず取材メモに、「アメリカの民主主義が死んだ日」と走り書きしました。最大の問題は、襲撃者がみな「トランプが大統領選に勝った」と信じていることです。彼らはトランプの勝利を1ミリも疑っていません。そうした事実誤認が襲撃につながったことが本当に悲しく、トランプが4年間つき通した嘘でアメリカの民主主義が死んでしまったと感じました。

池上:4年前にトランプ大統領が誕生した際は、グローバル化で産業の空洞化が進み、工場などが寂れて、見捨てられた労働者が彼を支持したのだと理解できました。ところがこの4年間で極右陰謀論であるQアノンなどが出現して、何の証拠もないのに「大統領選の勝利が盗まれた」と頑なに信じるようになった。なぜそんな荒唐無稽な物語を信じるのか、私にはまるで理解できません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン