昨年亡くなった名優の渋さを堪能できる作品
7位は、SF映画を一本どうしても入れたいと思って、『第9地区』。宇宙から何百万人もの難民がやってきたらどうなるか。政府は、彼らを受け入れ、ヨハネスブルクに第9地区という難民キャンプを作る。その第9地区から第10地区に移そうとするところから事件が発生してくる。さらに、難民キャンプでウイルス感染が起こるというのは、まるで現代を予見しているかのような内容だ。
昨年10月、ショーン・コネリーが90歳で亡くなった。「007」シリーズの初代ジェームズ・ボンドとして有名だが、晩年の作品『レッド・オクトーバーを追え!』のほうがおもしろいと思う。ということで、この作品を8位にしたい。
冷戦時代、ソ連の原子力潜水艦レッド・オクトーバーの艦長が、この原子力潜水艦を手土産に、アメリカへの亡命を画策する。ショーン・コネリーは、この艦長を演じている。往年の渋さを堪能できる。
年末年始、こんな映画を楽しんでいたが、国内では新型コロナの第三波の勢いが増し、まず首都圏で緊急事態宣言が発出され、一週間後、11都府県に拡大された。
一方、アメリカでは、トランプ大統領の支持者が連邦議会に乱入し、死者5人を出すという非常事態も発生した。現役大統領が暴動をあおったとされている。
映画にしたら、B級映画にしかならない、こんなありえない出来事が、民主主義の国アメリカで起こってしまった。信じられない思いだった。
やはりドキドキ、ハラハラは、映画の中だけにしてもらいたいものだ。
【プロフィール】
鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。イラクや福島の子どもを支援するJIM-NETのチョコ募金(https://www.jim-net.org/choco/)活動も。
※週刊ポスト2021年2月12日号