思い出される“第1次MBAブーム”
そこで思い出されるのが、多く大企業が味わった苦い経験である。
1970年代から1980年代にかけて、日本の大企業は将来の幹部候補をエリート教育の一環として社費でアメリカなどのビジネススクールに留学させた。
当時は第1次MBA(経営学修士)ブームと呼ばれた時代で、MBAホルダーはビジネス界で引く手あまただった。派遣された社員の中には留学先からそのまま他社に引き抜かれたり、帰国後間もなく外資系企業に移ったりする者が少なくなかった。
派遣者の歩留まり率が余りにも低かったので、復職後に何年間か“お礼奉公”せずに転職した場合は学費を返還するという誓約書を書かせるとか(法的拘束力があるか疑問だが)、留学期間中は休職扱いにして自費留学に切り替えるといった対策をとる企業が増えていった。
社員と会社が「Win-Win」の関係に?
給料も学費も会社負担の場合と違って、サバティカル休暇中は留学も自費でしかも無給なら、それだけ会社を辞めることに良心の呵責を感じなくても済む。したがって転職のハードルはそれだけ低くなるかもしれない。
長期のサバティカル休暇を取り入れようとする企業は当然、そのようなリスクは織り込み済みだろう。もしかするとコロナ禍で生じた余剰人員を減らしたい会社側の思惑とキャリアチェンジしたい社員の本音が一致し、Win-Winになることが想定されているのかもしれない。
コロナ禍で閑散とする空港カウンター(時事通信フォト)