女優・室井滋さんと絵本作家・長谷川義史さんの最新作『会いたくて会いたくて』
文章を読んで思いつくまま、手が動くままに絵を描いた
会いたい人に会えない、そのジレンマは子供よりも大人の方が切実に感じているはず──室井さんは大人へ向けてもこの物語を届けたいと願い、シーンによって長谷川さんに絵を描き分けてもらったと語る。
「クレヨンで描く力強くダイナミックな絵も魅力ですが、長谷川さんには『週刊文春』の連載『すっぴん魂』で12年ほど挿絵を描いていただいていて、線画の技術が優れていることも知っていたんです。
墨のような大胆な線画もあれば、細い線で描く繊細な世界もあって奥が深い。子供にも大人にも読んでほしいと思ったので、あまり絵は子供っぽくならない方がいい。今回はぜひ線画を取り入れたいと猛プッシュしました」
長谷川さんもその熱意に応えた。
「久しく“封印”していた線画を描きました。画材はすごく悩んで、普通の細いペンで描いてみようかなとか、万年筆の先みたいな、漫画を描くものも試してみたりして、最終的にペン先の細いガラスペンを使うことに。絵本にはケイちゃんの絵日記もあって、そっちはいつものクレヨンで描いています」(長谷川さん)
2人は室井さんの自伝的絵本『しげちゃん』シリーズでコンビを組むなど何冊も共同で絵本を作ってきたが、今作はプロセスも新しい試みだったと長谷川さんが明かす。
「普段ならば、このページだったら文字はこのあたりに入ると完成形を想定しながら絵を描くんですが、今回は室井さんが書かれた文章を読んで思いつくまま、手が動くままに絵を描きました。それを室井さんやデザイナーさん、編集のかたとの打ち合わせへ持っていって、どう使ってもらってもいいですって。文章を読んで説明として絵を描くよりも、自然と生まれてきた絵を料理してもらった方が新しいものができるかなとトライしたんです。実際、“へぇ~、こんなふうに使うんや!”と完成した絵本を見て、新鮮でした」
文/渡部美也 写真/浅野剛
※女性セブン2021年2月18・25日号