何度ダメ出しされても政治家が会食をやめない。新型コロナの第3波が到来しつつあった昨年12月中旬、菅義偉首相(72才)と自民党の二階俊博幹事長(82才)が「8人ステーキ会食」を楽しみ、緊急事態宣言が出た1月8日以降も石破茂氏(64才)の「9人ふぐ会食」、松本純氏(70才)らの「3人銀座クラブ会食」が続いた。さらには2月17日、白須賀貴樹氏(45才)も「高級ラウンジ通い」が明らかになり、自民党を離党した。
批判された二階幹事長は、こう堂々と反論した。
「会食目的ではなく、意見交換が目的。全く無駄なことをしているわけではない」
「会食も仕事だから黙ってろ」と言わんばかりの言いぐさに、世間の怒りが爆発した。
「ウチの夫も二階さんと同じことを言うけど、なんでお酒を飲みながらご飯を食べることが仕事なの?」(50代主婦)
「じゃあ、毎日朝から会社に行って昼間は何やってるのよ!」(40代パート)
どうしても会食したがる人たちがサッパリ理解できない、という声が多い。
「人間にとって会食は栄養補給だけでなく、コミュニケーションの手段でもあります。それは人類の進化と深くかかわっているんです」
そう指摘するのは、国立民族学博物館名誉教授の石毛直道さんだ。
「成長した動物は子に食事を与える場合を除き、基本的に個体単位で食事を探して摂取します。しかし、人間だけは違う。人間は2足歩行を始めた数百万年前から、誰かと一緒に食事をしてきました。
人間にとって家族や友人、職場の仲間などと会食することは、集団への帰属意識の確認や、相手との絆を深める本能的な行動なのです。昔から『同じ釜の飯を食った仲間』というのは、そうした本能を端的に表しています」
コミュニケーションをより円滑にするために人間が発明した手段──それが「お酒」である。
「昔から、お酒は“飲むと気持ちのよいもの”です。お酒を飲んでほろ酔いになると普段無口な人でも気軽に話ができるようになり、コミュニケーションが円滑になって集団の絆が深まります。
日本には同じ杯を回し飲みする風習がありますが、世界でも乾杯して一斉に杯をあおる文化が幅広くみられる。食事と酒をともにすることで親しさが生み出されることは、世界共通の行為です」(石毛さん)
紀元前1万年頃の人類史上最古とされるトルコの大規模遺跡「ギョベクリ・テペ」。そこで酒造に使用したと思われる巨大な石器が発掘された。巨大な神殿をつくる際、働き手が一致団結するために酒宴を催していたと考えられる。
また紀元前のエジプトには、「食べる、飲む、話す」などを一文字で表す象形文字が存在した。当時から、人間にとって「食事と酒と会話」はワンセットだった。原初の時代、人類はすでに“会食をしたがって”いたようだ。
それから長い時間を経た現代はストレス過多時代。アルコールがさらに重宝されるようになったのもうなずける。